鎌倉十三仏霊場を巡る Part.2

「鎌倉十三仏霊場」東の巡礼コースをご紹介します。

十三仏霊場の巡拝方法とは

鎌倉市内に位置する十三の霊場(札所・寺院)を紹介するPart.2です。
霊場には番号が振られていますが、どちらの寺院からお参りしても、1回ではなく数回に分けても問題ありません。
今回は前回の西のエリアに続き、東のエリアの寺院を巡りやすい順番で各寺院の仏さま「本地(ほんじ)」と、化身の十王+三王「垂迹(すいじゃく)」についてご紹介します。

「鎌倉十三仏霊場巡拝」 公式ホームページはこちら

明王院 【一番札所】

【本地】「不動明王(ふどうみょうおう)」
一面二臂(いちめんにひ:顔が一つ、腕が二本)のお姿で煩悩を焼き払う火焔を背負い、右手に悪を倒す降魔の剣、左手に人々を救うための羂索(けんさく:五色の糸をより合わせてつくるロープ状の仏具)を持つ姿で表現されます。
また、不動明王は、降三世明王(ごうざんぜみょうおう)・軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)・大威徳明王(だいいとくみょうおう)・金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう:金剛夜叉明王ではなく烏枢沙摩明王の場合もあり)の5体の明王(五大明王)の中心的存在です。
怒りの表情に怖さを感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、煩悩や誘惑などの障害を力づくで取り除くことを表しており、母親が子どもの事を思って叱るのと同じく、人々を正しい方向に導き、救うために怒っている表情なのです。


【垂迹】「泰広王(しんこうおう)」 
初七日(しょなぬか:亡くなってから7日後)、最初に出会う王です。
生前の殺生(せっしょう)の罪の重さによって現世とあの世を分ける境目に流れる「三途の川」の浅瀬を石伝いに歩いて渡るか、深い淵を泳いで渡るか、橋を渡るか方法を決定し「閻魔帳」に記録する王です。

▲五大明王が安置され、別名「五大堂」とも呼ばれる「明王院」

浄妙寺 【二番札所】

【本地】「釈迦如来(しゃかにょらい)」
人々をあらゆる苦悩から救って人生の安らぎの道に導いてくれる仏さまです。
仏教の開祖である釈迦は、もともと古代インドにあったシャカ族の王国の王子で本名はゴータマ=シッダールタと言います。
王位を継承せず29歳のとき、出家し、四苦(生・老・病・死)から解放される道をもとめた苦行を経て35歳で悟りを開きました。釈迦如来はこの悟りを得た姿をあらわしているとされています。


【垂迹】「初江王(しょこうおう)」
二七日(ふたなぬか:亡くなってから14日後)に出会う王です。
「三途の川」の浅瀬を石伝いに歩いて渡るか、深い淵を泳いで渡ると奪衣婆(だつえば)という鬼形の姥によって衣服を奪われ、懸衣翁(けんえおう)と翁に渡されると、生前の盗みの罪の重さによって枝の垂れ方が異なるという衣領樹(えりょうじゅ)に掛けられ、罪の深さを明らかにされた上で、この初江王に引き出されます。取り調べを行うと「閻魔帳」に結果を記して次の宋帝王の元へと送られます。
なお、亡くなった人でも遺族の方が初七日法要を行なった場合は、三途の川に架かる橋の上をお地蔵さまが手を引いて極楽浄土へ誘導していただけるそうです。

▲鎌倉五山第五位の名刹「浄妙寺」

報国寺 【四番札所】

【本地仏】「普賢菩薩(ふげんぼさつ)」
普賢という名前は、「すべてにわたって賢い」という意味であり、仏の慈悲と智慧をによって人々を救う仏さまです。
六本の牙をもつ白い象に乗ってどこにでもあらわれ救うとされており、文殊菩薩と共に釈迦如来の脇侍として祀られるケースが多くあります。
また、浄土教が流行する平安末期まで女性は男性に生まれ変わらないと成仏できないと考えられてきましたが、普賢菩薩が登場する「法華経(ほけきょう)」には「女性も成仏できる」と説かれていたことから特に女性からの信仰が多く集まるようになりました。


【垂迹】「五官王(ごかんおう)」
四七日(よなぬか:亡くなってから28日後)に出会う王です。
亡くなった方が生前に嘘をつかなかったか、人を惑わすことを言わなかったか、人の悪口を言わなかったか、人を仲違いさせるようなことを言わなかったか、物惜しみをしなかったか、怒らなったか、因果応報の教えを無視した考えや信仰心を持たなかったかを調べ、閻魔帳に記載して次の閻魔大王の元へ送られるとされています。

▲「竹の寺」として、国内外から参拝者が訪れる「報国寺」

覚園寺 【十一番札所】

【本地】「阿閦如来(あしゅくにょらい)」
「阿閦」の語源は「揺るぎないもの」を意味し、物事に動じず迷いに打ち勝つ強い心を授ける仏さまといわれています。
阿閦如来は最初から悟りを得た如来であった訳ではなく、大目如来(だいもくにょらい)から教えを受け感銘し、いかなる場合でも怒りや動揺しない心を持つことを強くを誓い、功徳を積んだ結果、成仏することができたとされています。


【垂迹】「蓮上王(れんじょうおう)」
日本で新たに十王に加えられた王で、亡くなってから6年後の祥月命日(しょうつきめいにち)の七回忌が忌日に当たります。

▲2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公 北条義時公ゆかりの「覚園寺」

来迎寺 【十番札所】

【本地】「阿弥陀如来(あみだにょらい)」
限りない光(智慧)と限りない命を持って人々を救い続けるとされており、西方極楽浄土の教主です。「南無阿弥陀仏」と唱えたあらゆる人々を迎えにやってきて極楽浄土へ導くと言われており、広く信仰されている仏さまです。


【垂迹】「五道転輪王(ごどうてんりんおう)」
十王の審判の中で、7人目の「泰山王」以降の審判でも結審しない場合、亡くなってから2年後の祥月命日である三回忌に最後の10人目として出会う王です。
愚痴・無知(嫉妬、恨み、執着)の心を戒めます。

▲美しい如意輪観世音菩薩坐像で知られる「来迎寺」

本覚寺 【三番札所】

【本地】「文殊菩薩(もんじゅぼさつ)」
「三人寄れば文殊の智恵」といわれるように、悟りを導くための智恵を与える仏さまとして知られています。獅子に乗り、蓮華の台座に座った姿であらわされます。


【垂迹】「宋帝王(そうていおう)」
三七日(みなぬか:亡くなってから21日後)に出会う王です。
三途の川を渡るとたくさんの化け猫と大蛇が現れ、生前に邪淫の罪を犯した者を化け猫が体を切り裂き、大蛇は体に巻き付いて骨を砕くとされています。
仏教では次々と快楽を熱望することが愛であり、愛に執着すれば苦しみになるとして戒めています。

▲日蓮宗の総本山身延山久遠寺より教祖日蓮の分骨して祀ることから「東身延」とも呼ばれる「本覚寺」

巡礼専用の御朱印帳

鎌倉十三仏霊場を巡拝する際におすすめしたいのが、専用の御朱印帳です。

黄色い表紙のサイズの大きな御朱印帳は、各札所の書き置きの御朱印を差し込んで綴じることができ、裏面には十三仏の御姿と経典が記されています。
こちらの御朱印帳は一番札所の明王院でのみ授与されていますので、明王院から巡拝をスタートされるか、他の札所からスタートされた場合は書き置きの御朱印を拝受しておき、明王院へ巡拝後に綴じると良いでしょう。

一方、青い表紙の一般的なサイズの御朱印帳は、墨書きか書き置きの御朱印を貼り付けることができます。
インターネットで通販も行われていますので事前に用意してから、巡拝を始めるのも良いでしょう。


専用御朱印帳はこちら

▲鎌倉十三仏巡拝専用の御朱印帳は2種類あります。

▲十三寺院の御朱印

2回に渡り「鎌倉十三仏霊場巡拝」をご紹介してきました。

仏教の中で「十三仏信仰」は宗派を超えて信仰され、日本人の死生観や現代の生活にも色濃く影響が残っていることがお分かりいただけましたでしょうか。

亡くなった人をしっかりと供養し、自分があの世に行った時に辛い思いをしないためにも数々の戒めを心に留め、日々の生活を過ごしていきたいですね。





【取材・文:岡林 渉】