鎌倉大仏と呼ばれる高徳院のご本尊さまは、正しくは「国宝銅造阿弥陀如来坐像」と言い、造立が開始されてから約770年の歳月が経っています。
当初は仏像を覆う殿舎があったものの、室町時代に倒壊してしまったため、その後の約520年近くは現在のような屋外にお座りになられています。
「阿弥陀如来(あみだにょらい)」さまは、人が亡くなった際、西のはるか先にある極楽浄土からお迎えにきていただけるとされる仏様です。
その阿弥陀如来さまと、お供えするように咲く桜の姿は、阿弥陀さまがいらっしゃる極楽浄土を彷彿させるような光景です。
「令和の長谷詣で ご本尊造立1300年を迎えた長谷寺」の特集(記事はこちら)でもご紹介しましたが、長谷寺のご本尊「十一面観世音菩薩」さまが造立されてから1300回の春を迎えました。
4月8日のお釈迦さまが誕生されたことを祝う「灌仏会(かんぶつえ)」には、花御堂が観音ミュージアムの前に鎮座されているお釈迦さまのために立てられます。
この花御堂を覆う桜から花びらがひらひらと舞う様子は、春を感じるひとときです。
今年もこの日まで桜が散りませんように。
光則寺は、鎌倉幕府5代執権北条時頼の側近である宿屋光則(やどやみつのり)の邸宅に建てられたお寺です。日蓮上人が佐渡へ流罪となった際弟子の日朗上人(にちろうしょうにん)は、宿屋光則の邸宅裏山の土牢(境内に現存)に幽閉されました。
しかし、宿屋光則は日蓮上人・日朗上人の教えに深く帰依(きえ)し、日朗上人を開祖として、光則寺を創建しました。
境内には四季を通じて花が咲き誇り、特に春の時期は参道を彩る桜と赤く塗られた山門のコントラストが素晴らしいです。
本堂前の樹齢200年の海棠(かいどう)は、「鎌倉市天然記念物」や「かながわの名木100選」に選ばれています。ぜひご覧ください。
弘法大師空海さまが護摩修法を行ったと伝わる霊場に、昨今話題の北条義時の長男である鎌倉幕府第3代執権北条泰時が<1219年>成就院を建立しました。
極楽寺切り通しの頂上部に位置しており、眼下に坂の下の海と青空に差し色のように咲く桜の組み合わせは鎌倉ならではの景観です。
極楽寺は北条義時の子で、鎌倉幕府の執権に次ぐ要職である連署(れんしょ)などをつとめた北条重時(ほうじょうしげとき)が開基し、のちに忍性上人(にんしょうしょうにん)を開山として迎えられました。
忍性上人は鎌倉幕府第8代執権の北条時宗(ほうじょうときむね)の命により療養所を設置するなど多くの救済事業も行いました。
茅葺き屋根の山門をくぐった境内には、ソメイヨシノの桜のアーチが続きますが、その先右手に北条時宗が植えた古株から発生したとされる「八重一重咲分け桜(やえひとえさきわけさくら)」があります。
この桜は1本の枝に八重と一重の花が咲く珍しい品種でソメイヨシノの開花を追うように咲きます。
※掲載情報は2022年4月取材日時点のものです。
取材・文・撮影 岡林渉