今回は江ノ電沿線の「エモい」ポイントを制覇するために数回乗り降りしますので、スマートフォンを使用し、アプリケーション『EMot』(エモット)で事前使用日を指定できるデジタル版の一日乗車券「のりおりくん」を購入しておきましょう。
その前に「そもそも『EMot』って何よ?」ということになると思います。
『EMot』とは「Mobility with Emotion」というフレーズから組み直した造語で「行きかた(Mobility)」だけではなく、「ライフスタイルや感動(Emotion)」を提案するアプリケーションです。
ルート検索やフリーきっぷや特急券などのデジタルチケットの事前購入、そして訪問先の周辺の店舗情報やシェアサイクル利用状況などがこのアプリケーション一つで確認できるので便利ですね。
まずは、アプリケーション「EMot」をお手持ちのスマートフォンにダウンロードすることから始めていきましょう。
アプリを立ち上げた後、上部の「買う」から江ノ電一日乗車券「のりおりくん」デジタル版を選択します。
利用日や決済方法を選択し購入した後、「使う」「利用開始」と進むと、こちらの一日乗車券の画面が表示されます。
▲実際の画面では電車がガタコトと動き、可愛いですよ。
「EMot」はアプリだけでなく、手軽にWEBブラウザでも購入できるので、お好きな方でお試しください。
今回は事前に「のりおりくんデジタル版」を購入しておいたので、そのまま改札口で上掲の画面を駅員さんに提示すればOKです。
混雑時には券売機に並ばずにスイスイ入場できるので便利ですね。
入場した後は鎌倉方面行きに乗車し、江ノ島駅に向かいます。
江ノ島駅に到着すると、改札口を出たスペースに4羽の毛糸で編んだ帽子と衣装を着飾った小鳥さんたちが皆さんをお迎えしてくれます。
色とりどりの衣装を着た小鳥さんの可愛さに、多くの方がカメラをむけていますが、この衣装は一定の時期ごとにテーマを決め、着替えているので、次回訪問する時は別の彩りの衣装を着た小鳥さんたちに出会えるかも知れませんね。
この小鳥たちが止まる車止めは、車止めや旗ポール等の製造販売をしている株式会社サンポールさんの商品でピコリーノという名前で販売されています。
1999年に江ノ島駅前の売店に勤めていた方が「寒そうで、かわいそう」と思い、ボランティアで毛糸で編んだ衣装を作り纏うようになりました。その可愛い姿が全国的に話題となり、サンポールさんから感謝状が贈られたこともありました。
ちなみにこの4羽ですが、3羽とはぐれてしまった1羽というストーリー設定になっていることはご存知でしょうか?
いつかはぐれてしまった1羽がかわいそうなので、無事に合流して等間隔に並んだ姿を見せて欲しいですよね。
江ノ島駅から改めて鎌倉方面行きの電車に乗車すると、腰越駅までは自動車と鉄道が共有する併用軌道と呼ばれる路面電車のような区間に入り、商店街の街並みや電車の脇を走る自動車を見下ろすと、ちょっとした優越感に浸れます。
腰越駅を過ぎるとお寺や民家が並びたち、視界が狭められているのですがカーブを曲がると突然視界が開け、右手に相模湾の大海原が広がります。このドラマティックなシーンでは、時に車内から歓声が沸き立つこともあります。
江ノ電はスピードに乗り、しばらく海沿いを軽快に走るとホームから海を臨むロケーションの美しさで知られ、関東の駅百選にも選ばれている鎌倉高校前駅に滑り込むように入りますので下車しましょう。
駅の改札口を出て前方に進むと右手に踏切が見えてきます。
この踏切は、海をバックに走り抜ける江ノ電の姿が以前からテレビ番組などで紹介されていました。
そんな中、某アニメでオープニングのワンシーンに登場したことから、このアニメが放送された海外の国々からこちらの踏切を撮影する人がやってくるようになり、現在では複数の言語が交錯する国際的な聖地として知られています。
「湘南の御三家」眺めながらのランチ! @Windera Cafe 七里ヶ浜店
鎌倉高校前駅そばの踏切から江ノ電の線路沿いの歩道を七里ヶ浜駅方面に海を眺めながら進みましょう。
しばらくすると道が二手に分かれた場所にたどり着きます。
この三角州のような場所は『トライアングル七里ヶ浜』と呼ばれる商業施設なのですが、今回のランチはこの商業施設内にある『Windera Cafe 七里ヶ浜店』でいただくことにしました。
屋内の席もありますが、テラス席は船の先端部のようになっており、大海原を掻き分けて進むクルーズ船の甲板の上で食事をしているような優雅な気分になれます。
「江の島」「富士山」「江ノ電」という「これぞ湘南の御三家!」という3点が一つに眺められる絶好のロケーションの中、新鮮なシーフードや、ボリューム感いっぱいの肉料理を満喫できますので、天気が良ければテラス席をお勧めします。
▲この日は富士山が見えませんでした・・・(TОT)
▲富士山が見えないときは、左から「富士山サンセット」&「富士山クリームソーダ」で脳内補充!
食後は、海沿いの歩道を鎌倉方面に進んでいきます。
しばらくすると七里ガ浜高校と鎌倉プリンスホテルの間にある踏切があります。
この踏切を渡り、七里ガ浜団地へ登る坂は、通称「美人坂」と呼ばれています。
「美人坂」の名前の由来ですが、坂を登り振り返ると美しい海が広がる様子が眺められることから、江戸時代に菱川師宣(ひしかわ もろのぶ)が描いた浮世絵「見返り美人」になぞらえて「美人坂」と呼ぶようになったとも言われています。
こちらの坂も、某有名ミュージシャンのミュージックビデオにも登場したり、アニメの舞台として登場したことでも知られています。
少し歩き疲れたので美人坂を降り、稲村ヶ崎駅に向かいます。
稲村ヶ崎から鎌倉方面へ1区間ですが極楽寺駅まで乗車します。
極楽寺駅で下車したあと、改札口を出て左側の坂を登ると「桜橋」と呼ばれる赤い橋があります。
この橋からは鎌倉方面に向かうために掘った極楽寺トンネルを見下ろせ、江ノ電がトンネルから飛び出てきたり、吸い込まれていく様子を見ることができます。
江ノ電は2022年9月1日に開業120周年を迎えましたが、120年前には藤沢駅〜片瀬駅(現在の江ノ島駅)までの区間でした。
その後、順次延伸され、1904年4月に極楽寺まで開通しました。
しかし、新田義貞が鎌倉攻めの際、極楽寺切通しを突破できなかったように、極楽寺から鎌倉市内に抜けるトンネルを掘る際は大変苦労したようです。
1907(明治40)年2月にトンネルが完成し、8月には鎌倉市内の大町までの区間が開業、そして1910(明治43)年11 月に小町(現在の鎌倉駅東口信号あたり)までの全線開業となりました。
なお、現在のJ R鎌倉駅西口には1949(昭和24)年3月に乗り入れています。
この極楽寺トンネルには、藤沢側のトンネル入り口の上に開通時に掲げられた「極楽洞」、鎌倉側には「千歳開道」の扁額(へんがく)が設置されています。
鎌倉方の「千歳開道」には、崖崩れ防止のシェルターがあるため見えませんが、藤沢方の「極楽洞」と刻まれた扁額はこの桜橋からよく見えますので確認してみてください。
なお、このトンネルは1907年の開通後に大きな改造はされておらず、電車用のトンネルとして当時のレンガ造りの様子がよく残されており、全国的にも貴重であることから「土木学会選奨 土木遺産」として認定された江ノ電の施設の一つに数えられています。
▲桜橋そばに設置された「土木学会選奨 土木遺産」の銘板
至高のチーズケーキと江ノ電の深い関係⁉️ @THE CIRCUS
極楽洞を見下ろす桜橋からは極楽寺駅に戻り、鎌倉行きの江ノ電に乗り長谷駅で下車するのもよし、桜橋から長谷駅方面は極楽寺切通しも降り坂なので歩いて長谷方面に進むのも良いでしょう。
江ノ電の線路に沿い、長谷駅から藤沢駅方面に少し戻ったところにチーズケーキを販売する『THE CIRCUS』があります。
こちらのお店は茅ヶ崎にあるチーズケーキとタルトの専門店『THE CIRCUS』で提供されている大人気のチーズケーキを鎌倉を訪問されるお客さまにも是非、召し上がっていただきたいと考え、2022年6 月にオープンしました。
出店にあたり、長谷の甘縄神社脇に佇む幻のカフェ『雨ニモマケズ』を自らデザイン設計し、運営している横山亨氏が新たに手がけた商業建築『星ノ夜月ノ下』にオーナーさんが魅了され、歴史ある鎌倉や目の前を走り抜ける江ノ電など、様々なものにインスパイアされながら、『THE CIRCUS』の世界観を自ら本気で表現したそうです。
まず、お店に入り、少し奥に進むと黒光りした古材の木を使用した床に気づくでしょう。
オーナーさんは当初、コンクリートや人工の床材を敷くことを考えていたそうですが、偶然、江ノ電の現役車両で一番古い305号車+355車に乗車した際、車両の木でできた床が車内の雰囲気を柔らかく包んでいることに気づき、新しいコンクリートや人工の床材ではなく、家を解体した際に発生する古材を利用することにしたそうです。
▲外からの日が差し込み、古材ならではの質感が輝きます
なお、オーナーさんは、木材で敷き詰められた屋内の窓から、切り取られた多様な江ノ電の車両が行き交う鎌倉ならではの景色を、みなさんが移動しながらベストな構図を見つけて楽しんでいただきたい、と言う想いから、敢えて固定した座席ではなく自由度の高いスタンド席にしたそうです。
そして屋内スペースを突き抜けた先には、ゆっくり座ってチーズケーキをいただけるオープンエアのスペースがありますが、その中でもお店の建物越しに走り抜ける江ノ電を眺められるポジションに座ってみましょう。
すると、外壁には安定のシンボルである六角形のタイルが貼られており、そのタイルのカラーリングが江ノ電の車両のカラーとシンクロすることに気付くでしょう。
このアイデアは『THE CIRCUS』が立地的に「江ノ電ビュー」であることに留まらず、その特性を活かすために、外観にも江ノ電のデザインを取り入れよう、と言うことで横山亨氏が考え出されたものだそうです。
『THE CIRCUS』さんと江ノ電との接点ばかり先に紹介してしまいましたが、肝心のお店でいただけるチーズケーキを紹介します。
こちらのチーズケーキは「今まで食べたチーズケーキの中で1番好き」と言ってもらいたいと言う想いから、徹底的に素材、味、食感にこだわったそうです。フランス産のカマンベールチーズ、イタリア産のゴルゴンゾーラチーズを惜しみなく使用し、パティシエがひとつひとつ丁寧に手作りしています。
また、ペアリングにこだわり、ケーキに合う、スペシャルティコーヒー、厳選された紅茶、アルコールやソフトドリンクなどを幅広く取り扱っています。
▲至高のチーズケーキと江ノ電ビューのコンビネーション
▲厳選されたドリンク類は、温度や時間など最高のコンディションで提供されます
ちなみに、トイレ脇の柱には利用時に赤く灯るアンティークなランプが設置されているものの、なかなか気づかれる方は少ないかも知れません。
実は、このランプにもオーナーさんの想いが込められていますので要チェックです。
こちらのランプはイギリスで実際に使用されていたもので、電車の側面に車掌さんがお客さまが乗り降りする際に自動ドアがキチンと開閉しているか確認するための赤い「車側灯」からイメージされたそうです。
ちなみにここまで鉄分が多い箇所があるので「オーナーさんは鉄道ファンでは?」と伺ったところ、そういう訳ではなく「江ノ電ビューの場所にオープンする店舗」であるという特性を最大に生かし、他にはないインテリアデザインを模索した結果だそうですので悪しからず・・・。
みなさんに朗報です!
このたび、オーナさんより江ノ電開業120周年のお祝いとして、この「江の島・鎌倉ナビ」の記事をご覧になり、来店・オーダーされた方に通常400円(税込)で販売されている「ロールパイ」をど〜んとプレゼントしていただけることになりました。
プレゼントしていただく「ロールパイ」はチーズケーキにも使われている、自家製のパイ生地を使ったもので「有機白ごま」「有機ほうじ茶」「ゴルゴンゾーラチーズ」 などのバリエーションがあり、食べ出したら止まらない美味しさがあります。
(どのバリエーションになるかはタイミングによって変わりますのでお楽しみに!)
オーダーされる際に、スマートフォンで《 こちら》のクーポン画面をご提示ください。
※サービス提供期間:2022年10月1日~11月30日まで
チーズケーキの味を堪能した後は長谷駅に戻り、鎌倉方面行きの江ノ電に乗車し、鎌倉駅に向かいます。
鎌倉駅のホームに降り、改札口に向かう際は藤沢から約10キロに渡り続いてきたレールの最後に1匹のカエルの置物が鎮座していることに注目してみてください。
ここに鎮座したのはいつ、誰が、何のためにしたかは諸説あるのですが、鎌倉駅に降り立った乗客の皆さんがこの先も無事に帰れるようカエルの置物を設置した、とも言われています。
今回の江ノ電の旅はここ鎌倉駅が終点ですが自宅に帰るまでが旅です。
お気をつけて!(by 校長先生・・・⁉️)
▲江ノ電に乗ってきたお客さまを見つめ続けるカエルさん
今回、タイトルでは「コンプリート」と名付けましたが、江ノ電沿線には紹介したポイント以外にもたくさんの「エモい」ポイントがありますので、みなさんも探しに出かけませんか。
お出かけた際は、撮影するために電車の運行、車や人の往来を妨げたり、許可なく私有地に入らないようにしましょう。
「誰よりも人の心を動かすようなシーンを撮影したい!」という気持ちはみなさん同じです。
画面やファインダーをのぞいていると前方に意識が集中してしまいますが、左右や後の状況を注意しながら、もし同じシーンを撮影する人がいる場合は順番を守り、譲り合うなどして気持ちよく撮影してください。
※掲載情報は2022年9月取材日時点のものです。
取材・文・撮影 岡林渉