まずは前日までこちらのお店の朝食を予約、翌朝の早起きに備えてしっかりと睡眠時間を確保しましょう・・・zzz。
「おはようございます!」目覚めはいかがでしょうか?
それでは、鎌倉でしか味わうことのできない贅沢なモーニングをいただくことにしましょう。
「鎌倉彫」と言うと、菓子盆や茶托(ちゃたく)として使うイメージはあっても、料理を盛ったり、飲み物を入れるような「普段使い」と言うイメージはあまりないかもしれません。
ところが、こちらのお店では、鎌倉彫の器に鎌倉周辺で栽培された食材を使用したお料理や、体にも優しい精進料理などを盛った食事やカフェメニューを頂くことができます。
今年の夏(8月末まで)は 「guriの夏時間~朝ごはん×夏カフェ」と銘打ち、二部制でオープンしています。
早朝から展開する「夏guri朝ごはん」(水曜~日曜日<07:30~12:30>)パートでは、「豆乳冷や汁」や、「夏野菜の揚げひたし」など朝を迎えたばかりの体に優しいだけでなく、昼の暑さを乗り越えるために最適な食材を厳選して提供しています。
「夏の刻・朝膳 ~豆乳冷や汁とともに~」「 白身魚×夏野菜の揚げびたし・朝guri膳」
でも「朝はちょっと苦手・・・」という方は「夏カフェ」(火曜~日曜日<11:00~17:00>)パートに来店してみましょう。
数あるカフェメニューの中でもおすすめしたいのが「真夏のgiri sweets 膳」です。
「黄膳」と「紅膳」の二通りがあり、刀痕を残した漆黒の鎌倉彫のお盆や器に盛られたビビットなカラーのアイスやパウンドケーキのコントラストは見ているだけでも元気が出てきます。
真夏のguri sweets膳 <黄膳> or <紅膳>
「鎌倉彫カフェ 倶利」でモーニングを頂いた後は、同じビル内にある鎌倉彫資料館に立ち寄りたいのは山々ですが、今回は先に鶴岡八幡宮へ向かいましょう。
何故なら、夏の時期、境内の源氏池・平家池に咲く蓮の花は早朝から開花するため、少しでも早い時間の方がより美しい姿をご覧いただけるからです。
華麗に咲く蓮の花をご覧頂いたあとは、源氏池近くに位置する鎌倉国宝館へ進みます。
鎌倉国宝館には、鎌倉彫のルーツとなったとされる仏師たちが製作した仏像や仏具を展示する「鎌倉の仏像」というテーマの常設コーナーがあります。
仏師たちが仏像や仏具を製作した時、祈りを込めて刻んだ刀痕を「鎌倉彫のルーツ」という新たな視点で鑑賞してみませんか。
鎌倉国宝館を鑑賞したあとは、戻る形となりますが、モーニングで利用した「鎌倉彫カフェ 倶利」と同じ鎌倉彫会館の3階に位置する鎌倉彫資料館を訪問します。
鎌倉彫資料館は室町時代から現代に至るまで、歴史的にも大変価値の高い鎌倉彫作品を時系列で展示しており、時代変遷を学ぶことができます。
また、製作工程についてもムービーや、製作工程毎の見本も展示しており、鑑賞しているうちに自分でも鎌倉彫を製作してみたくなってきますね。
小町通りの喧騒を鶴岡八幡宮方面に進み、鉄の井(くろがねのい)手前を左折する道は鎌倉時代から「窟小路(「いわやこうじ)」と呼ばれ、現在は鎌倉市川喜多映画記念館の脇をなぞりながら小路の名前の由来になった窟堂の前を通り、横須賀線の踏切を渡ると寿福寺に到着します。
「鎌倉彫再興碑」は明治時代に行われた廃仏毀釈により、仏師たちが存亡の危機に直面する中、後藤齋宮(いつき)と運久、三橋鎌山と鎌岳の二家の父子の活躍により、世の中で鎌倉彫が認知・再興されたことを顕彰し、多く仏師が工房を構えたとされる寿福寺門前周辺に建てられました。
2019年からの江ノ電の鎌倉駅のリニューアル工事に伴い、改札口からホームまでのコンコースを支える骨組みを寺社にのような木造の柱と梁に見立てた構造にリデザインしました。
その梁の部分には「中世」「近代」「現代」の3つの時代毎のパートに分け各2点づつ、合計6点の鎌倉彫作品を展示しています。
まず「中世」のパートでは、建長寺の黒須弥壇に彫られた「獅子牡丹」や、室町時代以降の香合や三足卓に利用される「屈輪文」のデザインをモチーフにした作品を展示。
続く「近代」パートでは、廃仏毀釈によって仕事を失った仏師たちの中でも日用品などを製作することにより、鎌倉彫として現在に引き継いできた、三橋家の「有栖川菊」・後藤家の「雲龍」と言う代表的なデザインをモチーフにした作品を展示。
そして「現代」のパートでは、鮮やかな色彩が印象的な「椿」とモダンアートのような幾何学的なデザインの「線」といった作品を展示しており、改札口からホームに着くまでの僅かな距離を進むことで800年近くの鎌倉彫の歴史を垣間見ることができますよ。
江ノ電の和田塚駅を海の方向へ進んで僅かの住宅街に一見、一般住宅のような佇まいの鎌倉工芸館があります。
鎌倉彫工芸館は鎌倉彫職人の組合事務所で、職人さんそれぞれに表現されたデザインや特徴を見つけながら観る楽しさを味わうことができます。
完成品の展示販売や鎌倉彫を制作する際に必要な素材も充実した品揃えです
1929(昭和4)年創業の老舗うなぎ専門店。鎌倉文士や文化人に贔屓にされたとして知られる名店。
近くに住んだ川端康成は、オーダーしてからさばき、備長炭を使ってじっくりと焼き上げるまで、1時間近くの時間を日本酒を飲みながら待っていたそう。
(事前に予約すれば、さほど待たずにいただけます。)
「うな重」に使われる鎌倉彫の重箱は、鎌倉らしく鎌倉彫で作られていますが、ご主人に伺うと鎌倉二階堂に住んだ作家・村松梢風(作家・村松友視の祖父)がデザインした重箱は数種類あるそうで、飴色に輝く漆塗りの重箱は、現在まで塗り直しをしながら大切に使用されています。
宝箱のような鎌倉彫の蓋を開け、ふっくらと柔らかく焼き上がったうなぎの姿が現れる一瞬は至福の時ですね。
脂が適度に乗ったふわふわなうなぎと少し硬めに炊いたご飯のコンビネーションが最高です
鎌倉彫を「知る・作る・食べる」で満喫したら、帰路につきましょう。
※掲載情報は2022年7月取材日時点のものです。
取材・文・撮影 岡林渉