Welcome! New Faces, New Shops (12)

町を彩る新規開店やリニューアルされたお店をご紹介【Laîné】

フランスの食文化と伝統を踏まえつつ、鎌倉や日本各地の素材を巧みに活かした本格的フレンチを堪能できるレストラン(Laîné)

▲築90年を超える洋館をリノベーションして、2022年11月にオープンしたフレンチレストランLaîné(レネ)

江ノ電稲村ヶ崎駅から極楽寺方面へ、左に入る坂道を少し上ると見えてくるクラシカルな洋館がLaîné(レネ)。お店を切り盛りするのはフランス北西部ノルマンディー地方出身のシェフ、レネ・アントニーさんと生まれも育ちも鎌倉のパティシエ伊純さんご夫妻。伝統的なフランス料理をベースに地産地消の食材、旬の素材を活かした料理が人気のお店です。

Laînéの始まりは2003年、パリでのアントニーさんと伊純さんの運命的な巡り会いまで遡ります。学生時代に栄養士の資格を取得し、将来は「食」関係の仕事につくのが夢だった伊純さん。短大卒業後は一般企業に勤めていましたが、ずっと抱いていた夢を諦めきれず、5年間勤めた会社を退職し、料理の勉強のため渡仏。

料理学校に通いながら、ケーキ店やレストランでアルバイトをする日々。その中で、伊純さんはアントニーさんが働くパリの有名レストランに勤めることに。「初めて会った瞬間、ニコッと笑ってくれて。その笑顔は今も写真のように鮮明に覚えています。」と伊純さん。二人は出会って2年後の2005年に結婚。2007年には日本へ移住し、2010年に念願のレストランを鎌倉雪ノ下に開店。

フランス人シェフによる本格的フレンチは徐々に評判を呼び、2015年には鎌倉駅近くの御成通りに場所を移し、人気のレストランとなりました。その後、コロナ禍の影響でウェディングなどのケータリング需要が減少したことを契機に、2021年に御成通り店をクローズして次のステージを目指すことを決意。2022年11月に稲村ガ崎に再移転し、リニューアルオープンされました。

▲料理の仕上げをするシェフの姿が見える店内。洗練され、落ち着いた空間でシェフの料理を存分に愉しむことができます

新店舗は稲村ヶ崎駅から歩いて5分ほど。森の一角に佇む築90年超の洋館を3か月かけてリノベーション。料理に留まらないお二人のセンスを活かし、まるでフランスの別荘のような素敵な一軒家レストランに生まれ変わりました。お客様への丁寧なおもてなしを心がけたいということで、Laînéの営業日は金、土、日及び祝日のみ、昼夜ともに3組までの完全予約制となっています。
(レストランは建物オーナー様の自宅敷地内にあります。ご予約時以外での敷地内への立ち寄りはご遠慮ください。)

▲コース料理の最初に供されるアミューズブッシュ(仏語で「口をたのしませるもの」の意味)。この日は伝統野菜パネ(白人参)のポタージュとジビエ(野生鳥獣)。佐賀の猟師さんが仕留めた仔猪のソーセージとエゾ鹿のエフィロシェ(身を細かくほぐしたもの)は、精肉店で働く父親がつくるシャルクトリー(パテやテリーヌなどの肉加工品)が料理の原点というアントニーシェフならではの料理です

一皿目のアミューズからシェフの感性で盛り合わされた小さな「口福」たちが並び、味覚だけでなく視覚からも食欲を刺激されます。
Laînéの料理は完全予約制でコースメニューのみ。「昼の軽めのコース」はアミューズ、前菜2品、メイン1品(肉または魚)、デザートの5品(7,800円)で、その他に昼夜共通でメインが肉と魚の2品となるコース(10,500円、15,000円、25,000円)があります。※価格は季節や食材により変わります。

▲前菜の一皿目はホワイトアスパラガスのマスタード・ビネグレットソース。フランス、ロワール地方から取り寄せた旬のホワイトアスパラガスを使った一皿は春の彩りと香りがいっぱい

▲前菜の二皿目は鎌倉由比ガ浜「三郎丸」の大蛤。グラニースミス(りんご)を使ったクリームの酸味と蛤の旨みが見事にマッチしています。地元鎌倉の魚介類や野菜を使った地産地消の料理も新生Laînéのコンセプトとなっているそうです

▲最後の仕上げ、盛りつけをするアントニーシェフ。テーブル席から横目で見ながらワクワクして料理を待ちます

▲メインは北海道産放牧豚の黒ビール煮。北海道の大自然の中でストレスなく育てられた放牧豚のバラ肉を黒ビールでじっくり12時間煮込んで仕上げたもの。ナイフが要らないほど柔らかくバラ肉の旨味、脂身の甘さをビールの苦みが引き立ててくれています (コース料理のメインは肉か産地直送の魚料理か、どちらか選ぶことができます。)

▲デザートはパティシエ伊純さんがアントニーさんの料理に合わせてアレンジした焼き菓子「クルスタッド・オー・ポム」。ノルマンディー地方名産のカルヴァドス(リンゴのブランデー)を使い、焼きたてサクサクのパイ生地の中にはリンゴのコンポートとカスタードクリーム、そして、バニラアイスが添えられています。シェフがテーブルで熱々の塩キャラメルソースをかけてくれて完成。これを食べたくて通っている常連客も多いという、伊純さんのスペシャリテです

▲窓の外の緑と木洩れ日が心地よい店内。通常営業日以外の月曜~木曜は貸切でプライベートな食事会の予約も可能です

▲シェフのアントニーさんと奥さんでパティシエの伊純さん。お店では接客も担当されている伊純さんとシェフとの間で飛び交うフランス語の会話が楽しく、思わずこちらも笑顔になります

「2000年に渡仏、2005年に結婚し、2010年に鎌倉雪ノ下でレストランをオープン。2015年には御成通りに移転というように、5年ごとに変化の節目が来るんです。」そして、コロナ禍に見舞われた期間は「失われた時間ではなく、自分たちの仕事を考え直す良い機会となりました。」と伊純さん。

今回のリニューアルオープンまでの準備期間中に、お二人は生産者や新しい素材との出会いと学びを求めて日本各地を巡ったそうです。「富山湾で白エビ漁の船に乗り、信州ではきのこや山菜について学び、千葉の農家で米作り体験をしました。これからも、(産地や生産者を巡る旅は)まだまだ続きますよ。」

お二人の目指すのは、食と真摯に向き合っている生産者とつながり、ネットワークをつくること。そして「生産者と消費者との間の架け橋」になることだそうです。「フランスの伝統や文化だけでなく、日本の季節の移り変わりや地産地消、Made in Japanの価値を改めて見つめなおし、学び、お客様とその価値をシェアしながら、未来へ繋がる今日の食の在り方を考えたいと思っています。」

フランスと日本。伝統と革新。稲村ガ崎で紡がれるLaînéさんの新しい物語、これからも楽しみですね。

取材 ALOHAS
※価格はすべて税抜きです。別途、消費税、サービス料がかかります。
※料理の内容、価格は季節や食材によって変更の可能性があります。
※掲載情報は取材日時点(2023年3月)のものです。