北条義時が生きた時代を見直す

五感で感じる「鎌倉時代」

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2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放送で大変賑わった鎌倉。
放送終了後、落ち着いた環境で今一度「北条義時が活躍した時代」に想いを馳せてみませんか。

鎌倉時代を知るスペシャリストに聞いてみました

2022年のNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放送によってゆかりの地はどちらも大変賑わいました。
今回、関連するテレビ番組への出演、出演者さんとのファンミーティングイベントでの解説、鎌倉市広報誌への執筆など、引っ張りだこだった鎌倉歴史文化交流館のお二人の学芸員さんにインタビューさせていただくことにしました。


ライター:まずお二人の自己紹介を兼ねて、研究している分野をお聞かせください。

山本MS:日本中世史で、主に鎌倉幕府や北条氏のことを中心に研究しています。

大澤MS:同じく日本中世史で、主に地域社会をめぐる鎌倉と京都の関係を中心に研究しています。

ライター:お二人が歴史に興味を持ったきっかけはどのようなものだったのですか?

山本MS:祖父が歴史好きでT Vの時代劇を一緒に見ていたり、平家物語の那須与一の話などをよく話してくれました。それを聞いて、歴史って面白いなあと思っていました。私は岡山の出身ですが、中学生のときに、ちょうど大河ドラマで「新選組!」が放送されていたので、
岡山出身の新撰組隊士ゆかりの場所を巡ったりしていました。そのような経験から、歴史の中でも武士に対して興味を持ち、そのルーツとなる平安末期・鎌倉時代を専攻するようになりました。

大澤MS:小学生の時に読んだ「まんが 紫式部」の絵が可愛くて綺麗に見えたのが、歴史が好きになったきっかけです。その後も子供用の古典を読み始めたのですが一番面白かったのが「平家物語」でした。そして6年生のときに決定的だったのが、永井路子さん「北条政子」を読んだことから鎌倉にハマることになりお小遣いを貯めて鎌倉に通いました。

ライター:山本さんは京都の大学のご出身のようですし、新選組が歴史に興味を持ったきっかけであれば、彼らが活躍した京都なら、いっぱい研究できそうですが幕末ではなく、鎌倉時代を選んだのですね。

山本MS:出身が岡山なので、歴史を大学で勉強するなら京都に行こうと思っていました。大学では、ずっと鎌倉時代を研究していたものの、当時は自分が鎌倉に住むことになるとは思っていませんでした。ただ、一度は関東方面にも住んでみたいなぁ、とは思っていました。縁があって鎌倉歴史文化交流館へ勤務することになり、鎌倉に住むことになりましたが、地の利を活かしてあちらこちらにフットワーク軽く調査に出かけられるのは便利ですね。


ライター:京都から鎌倉に下向(げこう)され、その後、偶然にも大河ドラマまで決定したのはラッキーでしたね。

山本MS:本当にそう思います。

▲鎌倉時代研究のスペシャリストのお二人

ライター:次に、みなさん知っているようで知らない学芸員というお仕事ですが、日々どのような業務をされているのでしょうか。

山本MS:週に1回のギャラリートーク(展示解説)や、学生や子どもたちに解説することも多いですね。
あと、一般の方からの電話での質問にも交代で対応しています。

ライター:観光案内所のようですね。その他にはどのようなお仕事がありますか。

山本MS:最初にどのような物を展示するか、資料を見たり、出張して調査をします。貸し出し交渉を行い、借りることが決定したら、スケジュールの調整や運送の手配をしたりポスターや図録を作ったり、と学芸的な業務と事務的な業務の両方があります。

ライター:今回の「北条氏展」は大河ドラマの放送に合わせ、2022年1月から開催されてきましたが、どのくらい前から、展示を考えたり交渉したりしましたか。

山本MS:大河ドラマで「鎌倉殿の13人」の放送が開始される2年前です。発表直後に伊豆の国市へ行きまして、北条氏邸跡の出土品を調査させてもらいました。
自分の専門分野が大河ドラマで取り上げられることは滅多にありませんし、鎌倉歴史文化交流館はまだ新しく知らない方も多くいらっしゃると思われるのでアピールする機会が欲しかった。もうすぐやろうっていう感じでした。

ライター:お2人で展示品のレイアウトなども考えられているのですよね。

大澤MS:史料のどちらのページを開いて展示するかも決めます。歴史的な史料は皆さんに見てもらいたいのですが、一方で保護・保存もしなくてはいけないので悩みます。

ライター:次に、主人公の北条義時はどんな人だったと思われますか?

山本MS:このような性格の人、という事をうかがわせるような面白いエピソードはなかなか残っていないのですが、姉の政子がいたことが非常に彼の人生にとって大きかったと思います。6歳年上のお姉さんですけれども、初代将軍の頼朝の妻で頼朝が亡くなった後も、後家として幕府で一番力を持っていて、その人の弟なので、その権威を背景に実務に徹することができたところもあり、真面目な政治家だったと思います。
先頭に立って引っ張っていくよりも目の前の仕事をしっかりとこなしながら周りの意見も必ず聞く、というような補佐役としての能力に長けている人ではないでしょうか。

ライター:彼の歴史的な存在意義とはどのようなものなのでしょうか。

山本MS:鎌倉時代の150年を通して見たときに何回か幕府瓦解の危機があります。鎌倉前期に絞ってみると、源氏将軍が途絶えた実朝暗殺と承久の乱と言う二つの大きな危機があり、それの二つを乗り越えた時期が尼将軍政子と執権義時の時代です。実朝暗殺は「まさか?」と言うような「青天の霹靂」の出来事だったと思います。
ではどうするか。頼朝と政子の血を引く男子がもういない、となったときに、京都から皇子を連れてきましょう、という事で、後鳥羽上皇と交渉したものの仲が悪くなる。その後、4ヶ月間交渉して上級貴族の息子である2歳の三寅を鎌倉へ連れてきて成長するまでは代理として政子が中継ぎで何とか尼将軍として繋いでいくのですが、もしこの時に政子と義時がいなかったらどうなったか分かりませんね。
承久の乱で武家が勝利したことによって、次の天皇を誰にするかという重要な場面に武家が介入するようになったのは事実です。その後の皇位継承時には、幕府へ意向を伺うようになっています。
この時代の人は、過去にどのようにしていたのかが一番大事なので、この先例を作ったっていうことは、とても大きな意味があると思います。

▲「北条氏展 Vol.4 北条義時の子どもたち」ポスター

ライター: 今回の大河ドラマに登場する人物は、男女共々、みんなキャラが立っている印象を受けました。時折「昔から女性は立場が低く、男性社会だった」という話が出てきますが、実際はどうだったのでしょうか。

山本MS:女性の方が男性の後ろを3歩下がって歩く、といった男尊女卑のイメージは近世(江戸時代)以降の話で、鎌倉時代の女性は比較的立場は高く、女性が政治に関わることに対して批判するような声も出ていません。


大澤MS:今の感覚と違って、ドラマでもすごく女性が生き生きと自分の意見をはっきり言う人たちとして描かれていますが、あれはあの時代に適しているな、と思います。財産は男女とも相続できますし。

ライター:実は鎌倉時代は、今よりもジェンダーフリー社会だったのかもしれませんね。
そして、特に関東にお住まいの方は、今回の大河ドラマに登場する人物の名前が「三浦」とか「比企」「千葉」「足立」など、現在の住所にも残っていることに気づいたのではないでしょうか。

大澤MS:私は埼玉県川越市出身なのですが、川越市は源義経へ娘を嫁がせた(郷御前)河越氏の館があった場所です。このような歴史的に関係している地域に自分も住んでいるんだなぁ、と思ったことも歴史を好きになるきっかけでした。

ライター:未開だった関東の土地を開発して私有地にした人がいて、その私有地を守るために武装し武士になり、その人が土地の名前を苗字にして「〇〇の太郎」と言うように名乗ったという事ですよね。
鎌倉時代の話と言われると、遠い昔の話で無縁かと思いきや、現在の我々の生活にも密接な関係があるのですね。

▲「北条氏展 Vol.4 北条義時の子どもたち」展示室

ライター:鎌倉歴史文化交流館・鎌倉国宝館では大河ドラマのストーリー展開に合わせ、「北条氏展」を4シーズンに分け、2人で担当を分けて開催されてきましたがどのような内容でしたか。

山本MS:vol.1では、謎も多いのですが、伊豆時代の北条氏はどういう存在なのか、に注目しました。伊豆の国市の北条氏の館跡からは瓦など、生活の様子をうかがわせるような出土品だけでなく、当時は貴重だった青磁や白磁が出てきます。そのような北条氏の館へ頼朝が流されてきます。鎌倉に入るまでの道のりをテーマにしました。

大澤MS:vol.2は、武士のイメージは戦いのイメージがありますが、それだけではなく婚姻関係を広く持っており、京都とも繋がっていて、文化的にも我々が想像している以上にいろいろな素養を身につけているのですね。そのような武士の二面性をテーマにしました。

山本MS:vol.3は頼朝の死後から、義時の死までを対象にしていました。一番の目玉は「承久記絵巻」をお借りし、鎌倉時代の未曾有の大乱をどのように乗り越えたのかを資料から知っていただけるように展示しました。最近、頼朝の墓の隣にある義時の墓とされる法華堂跡が整備され、AR技術を使ったバーチャル体験もできたり、結構多くの方が訪れられているようですが、法華堂跡からの出土した瓦なども展示しました。

大澤MS:vol.4では北条義時の子供たちにスポットを当てています。鎌倉の街は、鎌倉時代中期以降、泰時など義時の子供たちの時代に中世都市として発展します。当然、鎌倉幕府というのも、その影響力を持っていって大きくなっていく。それには子供たちの活躍がどうしても欠かせません。
政治的にも文化的にも優れた義時の子供たちが、鎌倉時代の中期から後期まで生きていて政権を支えています。その支えがあったからこそ鎌倉幕府が安定して続いた、と言ってもいいと思います。


ライター:やはり武士にとって最初の法律である「御成敗式目」を制定した泰時をはじめ、極楽寺を創建した重時など、三代目の子供たちがしっかりしないとダメになってしまいますよね。現代の会社でも二代目までは親子で苦労して築き上げても、三代目は苦労知らずで潰してしまう、ということがありますよね。
鎌倉歴史文化交流館では、大河ドラマの放送終了後も年末年始を除き、来年の3月11日まで「北条氏展 vol.4」が開催中ですが、大河ドラマを最終回まで観た上で、来館すると理解がより深まるかもしれません。


ライター:開催された北条氏展vol.1〜3まで見逃してしまった方はどうすれば良いでしょうか。

山本MS:今回の「北条氏展」は鎌倉国宝館(12月21日で終了)と二館で共催してきました。両館の文献や美術、考古など異なる専門分野を研究している学芸員が「義時とその時代」をテーマに結集して、未だかつてない充実した内容の図録を作成しましたので、こちらを是非購入の上、ご覧いただきたいです。(価格:2,000円)


ライター:本格的な図録までは・・・、というビギナー向けの出版物はありませんか。

大澤MS:北条義時の生涯をコンパクトにまとめた「北条義時ハンドブック」を販売しています。(価格:200円)
また、小中学生向けには義時を通じて鎌倉の歴史を学べる「北条義時ワークシート」を無料で配布していますので、この機会に興味を持っていただけると嬉しいです。

▲鎌倉の学芸員さんたちが総結集し、出版された「北条展」の図録

ライター:学生時代など「歴史は嫌い」と言う女の子の話も、時折聞きますが、実際にはお二人のように歴史を極めている女性もいます。歴史好き・歴史嫌いな人も含めて、最後にお二人から皆さんへメッセージをお願いします。

山本MS:私が大学生の頃、ちょうど「歴女」という言葉が流行り出した頃ですが、確かに男性研究者の方が多く、女性が研究を続けていくのは大変なのですが、家族や色々な人の支えもあり、好きだから続けています。自分のやってきた研究は社会に還元することで初めて意義のあるものになる、と考えているので今回の大河ドラマの放送によって、還元する機会をいただいたことは、大変ありがたいと思っています。
大河ドラマをご覧になられたお客さんに講演会でお話しすると、鎌倉時代にはこんなに魅力的な人たちがいたんだな、と新鮮に映っているようで嬉しいです。
私も歴史を研究するきっかけは時代劇でしたし、今回の大河ドラマがきっかけでも何でも良いので、まずは興味を持つことが大切だと思います。

大澤MS:やはり今まで戦国時代や幕末などと比べると鎌倉時代は注目度が低かったと思います。しかしこの時代が一番面白いと思っていたので、今回皆さんに大河ドラマを見ていただいたことをきっかけにして、一過性に終わらず、今後も長い間、興味を持っていただけるよう、我々も努力して、繋げていきたいです。まずは鎌倉歴史文化交流館へ来てください。(笑)

ライター:ありがとうございました。

▲お二人が執筆された「鎌倉殿通信」アーカイブは上掲のページでご覧いただけます

北条義時も食したと思われる「祝い膳」を食べてみました

「私は、鎌倉時代の歴史を勉強するより、体感する方がいいです・・・。」という方のためにこちらを紹介しましょう。

鎌倉屈指の日本料理の名店「鎌倉 鉢の木」では、専門家の意見を伺い「鎌倉武家祝い膳(時代食)」と銘打ち、当時の武士階級の祝宴の様子を再現しました。

当時は肉や魚、野菜などの食材は味を付けずに煮たり焼いたり調理をしていました。

流石に食材そのものの味だけでは物足りないため、先に無味の食材を噛みながら、醤油の起源とも言われる「醤醢(ひしお)」や塩などを含んで、口の中で味つけをしながら食べるのです。
このような味付け方法は「口中調味(こうちゅうちょうみ)」と呼ばれており、この習慣は現代の日本食文化にも色濃く残っています。
たとえば、今でも米を食べながら、漬物や味噌汁などを味わう習慣は「口中調味」の名残とも言えるでしょう。

事前に味付けされた食材に慣れた現代の我々には物足りないのでは、と心配してしまいますが、実際にいただくと、味付けされる前の各々の食材の味が際立ち、十分美味しくいただくことができます。

武士に生き方として求められた「質実剛健」を味わいながらを鎌倉時代を体感してみませんか。

※こちらのメニューは10名様以上の事前予約制になっています。
 お品書きや食べ方などのご案内をご希望される際は、ご相談ください。


▲「質実剛健」を料理に再現。 ©️鎌倉 鉢の木

「鎌倉殿・13人の重臣ゆかりの地」散策情報を集めてみました

古都と呼ばれる鎌倉は、京都や奈良に比べるとコンパクトな広さですが、実際に散策するとなると所要時間もそれなりに必要です。

そこで上手に散策するために事前にチェックすることをオススメしたいのが、エリア別に分けた5つのモデルコース情報を掲載する「ゆっくり散策コース」です。


こちらのページではモデルコースを画像やテキストだけでなく、動画でも紹介しているため、よりイメージを掴みやすくなっています。
1日で複数のコースをガッツリ散策するのも良いですが、数回に分けて鎌倉へ再訪し、散策すると理解もより深まるでしょう。

なお、「小町通り」や「長谷周辺」など、鎌倉の直近の混雑状況が確認できる「鎌倉混雑マップ」が公開されています。
混雑を避け、より快適な散策のためにも確認にされると良いでしょう。

▲「鎌倉観光混雑マップ」上部のリボンから「ゆっくり散策コース」へリンクできます

※「ゆっくり散策コース」は外部リンクに接続します。
※掲載情報は2023年1月取材日時点のものです。
取材・文 岡林渉