今回は、江の島・鎌倉のお隣にある人気観光エリア「葉山」と「江の島」間を、渋滞の心配なく移動することができる新しい交通手段「海上タクシー」を利用するモデルコースをご紹介します。海上タクシーの江の島側の乗り場がある「SHONAN江の島桟橋」へは、小田急線片瀬江ノ島駅が最寄り駅となります。小田急線新宿駅から片瀬江ノ島駅まで約70分。土日祝日は特急ロマンスカーも運行しています。
小田急線往復と江ノ電沿線の周遊にぴったりのチケットや、江の島シーキャンドル(展望灯台)の入場料金がセットになったお得なチケットもあります。お出かけの際にはぜひご利用ください。
江ノ電江ノ島駅の改札口からすぐ、江の島へ向かって真っすぐに伸びる「すばな通り」は、古くから江島神社への参道でもあり、今も飲食店やお土産屋さんなどが軒を連ねる江の島観光のメインストリート。そんな賑やかな通りに、美味しい物好きの地元民が通い始めたお店があります。
「身体は食べるものから作られる」という、大切なことを教えてくれた愛犬の名を冠した「trattoria TORA(トラットリア トラ)」。鵠沼海岸出身のオーナーシェフ、金子さんが2022年12月25日に開いたお店です。
すばな通りから階段を登って店内に入ると、落ち着いた空間が広がっています。客席からカウンター越しに見えるのは金子さんの調理風景。コンパクトな、されど使い勝手の良さそうな厨房で次から次へと、でも決して慌ただしくなることなく料理を仕上げてゆくのが分かります。お一人でキッチンを担い、奥様がホールでサービスをご担当。ご夫婦二人で営業されています。
天気が良い日にはテラス席も利用でき、お店の裏側を流れる境川からキッチンと店内を通りテラスに抜ける風が穏やか。「この気持ちの良い風が吹く場所には、なかなか出会えない」と、ここで開店することを決めた理由にもなったそうです。
ドイツの家族経営で作られたという白ワインをセレクトし、前菜から選んだ一品は「焼き茄子のレモンフロマージュ」。焼き上げた茄子の皮を剥き、しっかりと冷やされた茄子の上には半年程度発酵させた無農薬レモンを使った程よい酸味のフロマージュソースがたっぷり。さらにパルミジャーノ・レッジャーノのチーズも。ピンクペッパーなどスパイスも少しだけ効かせてあり、リッチなのに爽やかで奥深い旨味を感じる一皿。ワインも進んでしまいます。
昼夜問わず多くのお客様が注文されるというナポリピッツアから「有機ダッテリーニトマトのピッツア」をオーダー。石窯で焼き上げたピザは、生地はもっちりとした食感で風味も香も豊か。小玉サイズのダッテリーニトマトが主役の真っ赤なソースとモッツァレラチーズというシンプルな組み合わせながら、口に運ぶ手が止まりません。ソースとチーズを支える生地が際立っています。
ナポリピッツアと言えばイタリア産小麦や海塩を使った生地を使うことが多い中、国産の、しかも湘南小麦を天然酵母で発酵させて使う金子さんのピッツアに、本場ナポリの人々も賞賛を贈ることでしょう。地域の食材を厳選し、丁寧に料理することを掲げる本場イタリア料理の考えを、しっかりと体現されています。
「調理で使う材料は前段階の仕込みに重きを置いています。自分の都合に素材を合わせるのでなくて、素材そのものに調理法を合わせるように心がけています」と金子さん。国産の良質な豚肉で作るロースハムには和食のレシピから知恵を借りたり、他の仕込みでもお味噌などの発酵調味料を使うことも多いそうです。
丁寧に下処理されたトリッパは驚くほどの柔らかさで臭みも一切なし。仕上げ時に一緒に軽く煮込まれた湘南ポークのバラ肉(ベーコン)は味が凝縮され、噛めば噛むほど風味が広がります。国産小麦を使った生のショートパスタもトリッパやベーコンと合わさって風味を増幅させます。食事としてはもちろん、ワインの肴にもなる味わい深いパスタです。
「自家製パン(写真中央上)」は、前菜やパスタのソースを最後まで味わいたいというお客さんが、必ずオーダーするという隠れた人気メニュー。海塩がほのかに効いた小麦の深い味わいが絶妙な小さなパン。「ピッツアの生地を使って焼いただけなんです」と謙遜する金子さんの味を追求する姿勢が、このパンからも垣間見えるように感じました。
「例えば塩加減も調理の最後で“決める”というよりは、仕込みの段階で加えた塩分を活かして、最後は少しの塩で整える程度です。素材の風味を生かすために、引き算で素材の美味しさを引き出したい。そんなことを考えながら料理に向き合っています」と金子さん。
開店直後のお客さんが少なかった頃には、思索と試作で方向性を模索していたとか。開店から1年半程度ながら提供するメニューもどんどん変わってきているそう。地元のお客様が増えていることからも分かるように、変化を続ける料理がお店の進化として徐々に伝わり、地元の美味しいもの好きの方々に支持されはじめているようです。
ご夫婦お二人で切り盛りする小さなお店であり、お子さんもまだ小さいということから子育てを優先させ夏は平日のランチ営業はお休みされるそうです。夏期の平日は夕方から営業(要予約)とのこと。週末も予約されることをお薦めします。
「trattoria TORA」
住所 神奈川県藤沢市片瀬海岸1-13-11 2階
TEL 0466-21-9777
アクセス 江ノ電「江ノ島駅」から徒歩約4分、小田急「片瀬江ノ島駅」から徒歩5分
営業時間
ランチ 11:30-14:30(L.O.13:30)
ディナー 平日 18:00-21:00(L.O.20:00)、土日祝 17:30-21:00(L.O.20:00)
※夏季のみ変則的になります。詳しくは店舗に直接お問い合わせください。
定休日 月曜日、水曜日(祝日営業)
※7月中旬~8月末頃までは月曜定休(祝日営業)+不定休。週末以外はランチはお休み。
江の島・鎌倉と葉山は同じ相模湾沿いにある人気の観光地。平日週末を問わず公共交通機関も道路も混雑するため、日帰りで両エリアをじっくりと巡る観光は難しいものがありました。そんな中、2024年3月28日に江の島の湘南港に「SHONAN江の島桟橋」が開設され、江の島と逗子、葉山、大磯などを結ぶ「海上タクシー」の運行がスタートしました。
陸路ではなく海路での移動。新しい交通手段の海上タクシーは渋滞知らずで、海上から鎌倉や逗子、葉山の景観を眺めながら移動できる海洋ツーリズムとしても注目されています。
江の島・葉山間の海上タクシーを運行するのは今年創業60周年を迎えた葉山マリーナ。ヨットハーバーを併設しマリンスポーツなどレジャーやサービスを提供しています。
海上タクシーの乗船には前日までの予約が必要です。最小運行人数は2名。他にお客様の予約があればお一人での利用もできるそうです。江の島発が11:30、13:30、15:30。約30分後に葉山マリーナに到着します。葉山発は、10:30、12:30、14:30。片道はもちろん往復での利用もできます。キャビン(室内客席)もあり肌寒い季節や少雨でも快適です。
定員(乗組員は除く)は10名。運行状況次第では、当日の予約(電話)で乗船できることもあるそうです。
出港予定時刻より15分程度は早めに「SHONAN江の島桟橋」へ到着することをお薦めします。江の島ヨットハーバー・ヨットハウスからも徒歩で約6分。片瀬江ノ島駅からは徒歩23分、江ノ島駅からは徒歩27分ほどの距離があります。
過去2回のオリンピック大会でのヨットやセーリングの競技会場にもなった相模湾。そのメインのゲレンデである江の島・葉山間が海上タクシーの航路となっています。
七里ガ浜や稲村ガ崎、由比ガ浜を越えたらあっという間に逗子、そして葉山が近づいてきます。移動しながら海上の景観を楽しむことができるのが海上タクシーの魅力です。
森戸神社沖にある名島(菜島)は赤い鳥居が目印。祠があり、龍神様を祀っているそう。その向こうには、古くから海上からの目印としても親しまれていた「大山」の山容も。天気の条件が整えば富士山も見える絶好のロケーションです。
江の島と葉山マリーナ間だけなら約20分程度の航路のところ、海洋観光として森戸海岸沖きにある裕次郎灯台や名島も回遊するコースが嬉しいです。日中に江の島と葉山間を30分で移動するのは難しいため、海上タクシーは時間的なメリットも大きいですね。
江の島からわずか30分で到着する葉山マリーナ。同じ相模湾に面しているのに、葉山の雰囲気は、江の島や鎌倉とは少し違うから面白いですね。
海上タクシーの予約方法、乗船場所など詳細は運営する株式会社葉山マリーナーのホームページ (https://hayamamarina.com/sea-taxi/) にてご確認ください。海上タクシーの他にも葉山と江の島間を周遊する江ノ島・裕次郎灯台周遊クルージング(45分)も定期運航されています。
「SHONAN江の島桟橋」
住所 神奈川県藤沢市江の島1丁目地先(湘南港灯台・南緑地近く)
TEL 0466-22-2128(江の島ヨットハーバー)
アクセス 小田急「片瀬江ノ島駅」から徒歩23分、江ノ電「江ノ島駅」から徒歩27分
営業時間 運行会社による
定休日 運行会社による
海上タクシーで海を渡り、上陸した葉山で真っ先に食べたいのは、マーロウのプリン!葉山のご当地スイーツと言えばマーロウを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
マーロウは、1984年に横須賀市秋谷でレストランとしてスタートし、今年で創業40周年を迎えたそうです。現在は都内も含め12店舗も擁する地域の名店です。オリジナル耐熱ビーカーに入ったプリンはお土産やギフトとしても人気です。
葉山マリーナにある「マーロウ 葉山マリーナ店」は相模湾を一望でき、プリンをはじめ、食事も楽しむことができます。本店の開店当時から目の前の海でとれた「地魚のアヒージョ」や「葉山牛のステーキ」が人気メニューで、三浦の新鮮な地野菜もたっぷり使われているそうです。
店内飲食を提供しているお店ごとに異なるプリンアラモードを用意されているそうで、今夏の葉山マリーナ店ではご覧の通りのボリューム感のあるツインタワー仕立てになっています。
ツインタワーの名の通り、大きなプリンが中央に二つ。プリンは季節限定品も含め、自由に選んで組み合わせることが出来るそう。探偵小説の主人公 フィリップ・マーロウ氏のように、今まで食べたことのないプリンを選んで、少し冒険気分を味わってみるのも良いかもしれません。プリンだけでなくアイスクリームも濃厚で、季節のフルーツと一緒にいろいろな味わいを楽しむことができます。
マーロウのプリンの特徴は、何といっても良質でシンプルな材料を使い、手作りされていること。新鮮な鶏卵と北海道産の牛乳や生クリームを中心に添加物を使わずにオーブンで焼き上げて提供されています。良質な素材が持つそのままの風味を活かすことを心がけていらっしゃるそうです。
店頭では各種プリンをはじめ、オリジナルのパウンドケーキ(グルテンフリー)やレストランで使用するドレッシングなどの調味料、食材、そしてワインなども販売されています。プリンは保冷バックに入れてお土産で持ち帰ることもできますし、配送も対応されています。
葉山まで足をのばしたら、相模湾の眺望と一緒に老舗マーロウの絶品プリンをぜひお楽しみください。
「マーロウ 葉山マリーナ店」
住所 神奈川県三浦郡葉山町堀内50-2 葉山マリーナ1階
TEL 046-875-0412
アクセス JR「逗子駅」からバス9分「葉山マリーナ」下車。京浜急行「逗子・葉山」駅からバス7分「葉山マリーナ」下車
営業時間 ランチタイム 10:30-14:00(L.O.)※混雑具合により短縮の可能性あり
喫茶 10:00-18:30(L.O.18:00)
テイクアウト 10:00-19:00
定休日 火曜日(繁忙期・祝日除く) ※葉山マリーナに準ずる
ホームページ https://www.marlowe.co.jp/
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葉山マリーナから森戸海岸へは徒歩で約13分。どことなく懐かしさを感じる海街の家々や路地の景色を見ながら歩いていると、あっという間に到着します。夏の間は海の家が立ち並び賑わいを見せる森戸海岸ですが、真夏以外は地元住民の遊び場、憩いの浜辺という雰囲気で、静かなビーチが広がっています。
その森戸海岸からかかる赤い橋を渡るとすぐにあるのが、鎌倉時代に創建された葉山の総鎮守、森戸大明神です。
伊豆の三島大明神(三嶋大社)に源氏再興を祈念し伊豆から鎌倉へ移った源頼朝。都から遠くはなれた鎌倉で武家政権を確立すると、深く信仰していた三島大明神の分霊を歓請し、森戸大明神をこの場所に創建されました。
鎌倉時代は、鎌倉周辺の七瀬祓(ななせはらい)の霊所の一つとして、厄除などの加持祈祷や禊をする聖なる場所であり、歴代の武将らが武事を奉納された舞台でもありました。
源頼朝をはじめ北条氏など鎌倉時代の歴代武将をはじめ、江戸時代には徳川家からも崇敬されていたそう。現在は多くの人々が参拝に訪れ、海辺の境内で神前結婚式なども行われています。
境内の社務所では、御札やお守り、ご朱印などを求めることができます。本殿へお参りしたら、ゆっくりと境内を散策してみましょう。
境内の奥は相模湾が広がり、右手には逗子や鎌倉の海岸も見えます。真っすぐと先に視線をのばせば江の島はもちろん、天気の良い日には雄大な富士山も見える素晴らしいフォトスポットです。
吾妻鏡によれば、源頼朝は森戸大明神を創建しただけでなく、周辺に別邸も設けたと記されています。
平治の乱に敗れ、伊豆に流され虐げられた生活を約20年も続けた頼朝公。多感な青年期を孤独に過ごした伊豆の地が見えるこの森戸大明神で何を想ったのでしょうか。
今回は江の島から葉山への海上タクシーで移動し、1日で両エリアを巡るモデルコースをご紹介いたしました。海上からの景色は新鮮で、渋滞を気にせずに短時間で移動できることで湘南エリアの旅行が一層充実しそうです。海上タクシーは葉山から江の島へも運行されていますので、旅のプランに合わせてぜひご利用ください。
「森戸大明神(森戸神社)」
住所 神奈川県三浦郡葉山町堀内1025
TEL 046-875-2681
アクセス JR「逗子駅」からバス15分「森戸神社」下車~徒歩1分。京浜急行「逗子・葉山」駅からバス13分「森戸神社」下車~徒歩1分
参拝時間 24時間参拝できます(社務所 9:00-17:00)
ホームページ https://www.moritojinja.jp
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