「江ノ電バスのり旅きっぷ(江ノ電バス1日乗車券)」で行くおトク旅

【あじさいシーズンにおススメ】江ノ電バス1日乗車券で、北鎌倉&長谷エリア散策

『江ノ電バスのり旅きっぷ』とは?

江ノ電というと鉄道をイメージされる方が多いと思いますが、鉄道の他にもバス路線も運行しています。

江ノ電バスは藤沢市・鎌倉市・横浜市内や羽田空港へのアクセスの路線を運行しており、このうち、羽田空港アクセス路線を除く全路線で利用可能な1日乗車券『江ノ電バスのり旅きっぷ』が2025年3月15日(予定)まで販売されています。

この『江ノ電バスのり旅きっぷ』は、スマートフォンでデジタルチケット購入や、お店のサービス情報検索などの機能があるアプリ「EMot」から購入できるため、当日どのバス停からもすぐに散策をスタートすることが出来るのが特徴です。
※アプリダウンロードが不要な「EMotオンラインチケット」サービスもあり、こちらはWebブラウザから購入可能です。

今回のコースはこの『江ノ電バスのり旅きっぷ』を利用して北鎌倉・長谷エリアを散策してみましょう。

▲スマートフォン画面に表示される「江ノ電バスのり旅きっぷ」

【JR大船駅東口交通広場バス停】今回のバス旅はJR・湘南モノレール大船駅からスタート!

今回のモデルコースは、JR東海道線・横須賀線・根岸線、湘南モノレールが行き交う大船駅からスタートします。
JRの大船駅には、東京寄りの北改札口と小田原寄りの南改札口があり、江ノ電バスの鎌倉駅東口行きバス停は、南改札口から出場した後、ルミネ前(湘南モノレール前)を通り抜け、右折した先にある東口交通広場の6番のりばから出発します。

バスに乗車した後、右手の山の上にいらっしゃる白い半身の姿の大船観音さまに見送られて北鎌倉方面に向かいます。

▲観音さまに今日一日の旅の無事をお祈りしましょう

【明月院】円窓に自分の姿を見る

大船駅東口交通広場バス停から、鎌倉駅東口行きバスに乗り、明月院バス停へ向かいます。
バス停からJR横須賀線の踏切を渡り、谷戸の道を進むと約徒歩5分で明月院の入口に到着します。

明月院はもともと源頼朝の乳母(めのと)の一人だった山内尼の息子で山内首藤経俊(やまのうちすどう つねとし)が父山内首藤俊通(やまのうちすどう としみち)の供養のために建てた明月庵が始まりとされています。
その約百年後に現在放送中の大河ドラマの主人公となっている北条義時の曾孫にあたる第5代執権北条時頼がこの周辺に「最明寺(さいみょうじ)」を建立しましたが、時頼の死後に廃寺となりました。
その後、息子の第8代執権の北条時宗が禅興寺(ぜんこうじ)として復興し、室町時代には関東管領の上杉憲方(うえすぎのりかた)が「明月院」と改め、支院の首位に置かれました。

梅雨の時期にはアジサイが境内を埋め尽くすように咲くことから「あじさい寺」とも広く知られ、多くの参拝者で賑わいますが、アジサイはもとより、春に山門前に咲くシダレザクラ、後庭園に初夏に咲く花菖蒲、そして秋を彩るモミジ、冬のスイセンやロウバイなど一年を通じて境内を彩る自然がお参りする我々の心を和ませてくれます。

昨今では、本堂にある「円窓(悟りの窓)」越しの後庭園の美しさが話題となっており、この光景を撮影する人で行列ができる時もあるほど人気になっています。

そもそも「円窓(悟りの窓)」とは何なのでしょうか。
明月院は禅宗である臨済宗の寺院ですが、禅宗では「円相(えんそう)」と呼ばれる始めも終わりもなく途切れることのない丸の姿に、執着心から解放された悟りの状況と捉え、書画や窓のデザインに表現します。
「円相(えんそう)」は「円窓(えんそう)」に通じ、悟りを開くための「己の心を映す窓」とされるのです。

この「円窓」をカメラで撮影した後は、日々の忙しさにかまけてなかなか省みる機会のない己の心を見つめ直してみませんか。

▲円窓越しに見る初夏の深緑の世界

▲円窓越しに見る錦秋の紅葉の世界

▲「明月院ブルー」とも呼ばれる青一色の山門前のアジサイ

【葉祥明美術館】谷戸の深き自然に包まれたメルヘンの世界

明月院の出口から行きに来た道をを約3分ほど歩くと木立に囲まれたジョージアンスタイルの洋館が右手に見えます。

アンパンマンの作者であるやなせたかしさんに「空気を描く」と評価された葉祥明さんのメルヘンチックな作品は、葉さんのお名前はご存知なくても文房具やファンシーグッズなどで一度は見かけた方も多いのではないでしょうか?

展示されている作品をくつろいだ気分で鑑賞して欲しい、という葉さんの願いから「画家であり詩人でもある父親と夫人、10歳のリラちゃんと5歳のクロードくんの一家がかつて住んでいた洋館」という設定のもと、部屋をリラちゃんやクロードくんなどが使っている家具や人形を設置し、その壁の装飾として作品を掛けているというしつらえになっており、展示作品としてではなく装飾品のように飾ってあるため、気軽に作品を楽しむことができます。

また、葉さんは絵画に限らず、言葉の持つ力を大切にしており、葉さんの特徴ある字体で言葉を記した作品は読む人の心深くに浸透していきます。

みなさんは、どのような気持ちでこの美術館をあとにするのでしょうか。

なお、2022年7月29日 (金)までは「葉祥明の世界〜幸せへの道案内人〜」と銘打ち、葉さんが数多く出版してきた絵本の中から特にメッセージ性が高い作品の原画を選んだ企画展を開催しております。約50年間の画業を続けてきた中で、読者に対してどのような思いを込めて作品を制作されてきたかという葉さんの全体像を知るチャンスですので是非ともお出かけください。

平和 絵本「あの夏の日」2000年  ©️葉祥明

▲癒しの空間がここにあります

【鎌倉 鉢の木】古都鎌倉の台所役

葉祥明さんの作品を見て心が癒された次は、胃を癒してくれるランチをいただくことにしましょう。

「鎌倉 鉢の木」さんは季節を感じることができる食材を地元をはじめ、全国から厳選して仕入れています。
提供される和食・日本料理は禅宗寺院が立ち並ぶ寺町「北鎌倉」で培われた日本文化を色濃く反映しており、国内のお客様だけでなく、多くの海外の要人の方々が鎌倉に来訪された際に立ち寄られていることからもわかります。

今回のランチは北鎌倉の四季のうつろいを味わうのに最適な「季節膳」をいただくことにしました。

まず、いただく前に器に盛られた食材の切り口や色合いを目で楽しみましょう。
そこに丁寧な仕事を感じ取ることができます。
そして、いよいよいただくことになりますが、美味しさだけでなく、体にも優しい味わいであることが、どなたにもお分かりいただけるのではないでしょうか。

ごちそうさまの後は、食後なのになぜか心も体も軽くなった気さえしてくるから不思議ですね。

▲目と舌で四季を味わう「季節膳」  ©️鎌倉 鉢の木

【浄智寺】宝はすぐそこに⁉︎

葉祥明美術館を後に、来た道を戻りJR横須賀線の踏切を渡って少し歩き左手に折れると徒歩約3分で浄智寺の境内に到着します。

浄智寺は、以前にモデルコース「のりおりくん」で行く一年中いつでもお参りできる「鎌倉・江の島七福神」巡拝の旅で鎌倉・江の島七福神巡拝の記事で布袋さまがいらっしゃることでも紹介させていただいた鎌倉五山第四位の名刹です。

浄智寺の山号は「金寶山(きんぽうざん)」と言い、山門には鎌倉時代に宋(中国)から来日し、円覚寺の開山にもなった禅僧無学祖元の筆とされる「寶所在近(ほうしょざいきん)」による扁額(へんがく)が掲げられています。
参拝される方々の多くは、この扁額には目を止めずにスルーしてしまいますが、ここでこの言葉の意味を改めて考えてみたいと思います。

凡人は「寶所在近」という言葉から、宝探しの地図に書いてある「寶(宝)がすぐそばにありますよ」という暗号なのでは、と早合点してしまいそうですが、ここで言う「寶所」とは極楽のことを指します。極楽とは彼方遠方にあるのではなく、もともと自分自身の心の中にあるのであって、苦しい現状から逃れて極楽を求めようとしても、自分自身の心の中の極楽を見つけ出さない限り極楽には辿り着けないのであり、見つけることができるようになるためにより一層精進しなさい、と言う意味であると言われています。

四季を通じて美しい寺域は国の指定史跡とされ、歴史と自然に守られた寺域そのものも我々にとって宝物ですが、「寶所在近」の教えを胸に刻んで仏さまをお参りすると、我々ひとりひとりの心の中にある宝物に気付くきっかけをいただくことができるかもしれませんね。

▲「寶所在近」の扁額を掲げる山門

【食事処『海光庵』】海を眺めながら名物「みたらし団子」に舌鼓

浄智寺からはまず明月院バス停に戻り、鎌倉駅東口へ向かいます。
鎌倉駅東口に到着した後、1番線のりばから発車する藤沢駅南口行きバスに乗り換えます。

ちなみに、バスの時刻を確認するだけでなく走行しているバスの位置まで知ることができるシステムがあるのをご存知ですか?
そのシステムは「江ノ電バスナビ」です。
これで、時間を無駄なく有効に使うことができます。ホント、便利になりましたよね〜。

では、長谷観音バス停で下車し、長谷寺に向かいます。
長谷寺は特集「令和の長谷詣で 本尊造立1300年を迎えた長谷寺」でも紹介された通り、2022年12月18日までご本尊の観音菩薩立像の造立1300年記念プロジェクトとして多くの催しを行っています。
また、北鎌倉の明月院と並ぶ鎌倉のアジサイや紅葉の名所としても知られ多くの参拝客をお迎えしています。

今回はお参りした後に、境内の高台に位置するお食事処「海光庵」で由比ガ浜の広々とした光景を見下ろしつつ、名物のみたらし団子と冷たい抹茶で一息入れることにしましょう。
ここまでの散策の疲れが程よい甘味と抹茶の苦味で消え去ってしまうのではないでしょうか。

北鎌倉の深い緑に続き、相模湾の青い大海原という鎌倉が持つ二つの側面を眺めながら散策すると、自然と共生する鎌倉の魅力を改めて感じますよね。

▲空と海と山のパノラマビューについつい時間を忘れてしまいます

▲アジサイに包まれるシーズンの境内は格別です

【「藤沢駅南口」バス停】お疲れ様でした!

長谷寺に向かう際に下車した「長谷観音」バス停に戻ったら、藤沢駅南口行きのバスに乗車し終点の藤沢駅に到着すれば今回のコースは終了です。

バスでの旅は、1日乗り降り自由な江ノ電バスのり旅きっぷ(江ノ電バス1日乗車券)がおススメです。

※掲載情報は2022年6月取材日時点のものです。
※料金はすべて税込みです。

取材・文・撮影 岡林渉