
▲小田急線「藤沢駅」改札を出てすぐ。藤沢駅南口1番のりばから「鎌倉行」バスが出発します

▲小田急線「藤沢駅」改札を出てすぐ。藤沢駅南口1番のりばから「鎌倉行」バスが出発します
小田急線で藤沢駅に到着した後、鎌倉方面へ向かうなら「江ノ電」への乗り換えが一般的かもしれません。しかし、実は「路線バス」という選択肢が、驚くほど便利で快適なのをご存知でしょうか。
待ち時間わずか。バス停も藤沢駅改札近く
小田急線「藤沢駅」の改札を出てすぐ。藤沢駅南口1番のりばから、鎌倉駅行きのバスが出発します。 土休日の午前中(8時〜12時)は1時間に3便、平日は時間帯により4便~5便と運行本数が多く、待ち時間が少ないのが魅力です。
驚きのショートカット!長谷エリアまで最短約20分
交通状況にもよりますが、スムーズに進めば「藤沢駅」から鎌倉大仏の目の前にある「大仏前」バス停まで、わずか20分ほどで到着します。 駅の乗り換え時間を含めると、江ノ電を利用するよりも短時間で長谷エリアにアクセスできる、まさに「知る人ぞ知る」タイパ抜群のルートなのです。

▲車窓から見える景色も、新鮮に映るのではないでしょうか(大仏隧道「MOKICHI KAMAKURA」前)
車窓に広がる、鎌倉の歴史と日常
バスは藤沢の街を抜け、藤沢鎌倉線(県道32号)を一路鎌倉へ。 途中、湘南モノレールの「湘南深沢駅」周辺を通り、かつての切通(きりとおし)の風情を残す大仏隧道(トンネル)を抜けると、いよいよ鎌倉の旧市街へ。車窓から眺める景色も、電車とは一味違った新鮮な発見があるはずです。「大仏前」バス停で下車したら、まずは鎌倉観光のシンボル、鎌倉大仏殿高徳院を訪ねてみましょう!
◎江ノ電バスのり旅きっぷ(江ノ電バス1日乗車券)のご紹介

▲江ノ電バスのり旅きっぷ(江ノ電バス1日乗車券)※EMot表示イメージ
今回のルートだけでなく、周遊や復路にも路線バスを活用するなら、江ノ電バス全線(羽田空港線除く)が1日乗り放題になる「江ノ電バスのり旅きっぷ」が断然お得です。
利用エリア:藤沢駅〜鎌倉駅間、藤沢駅〜江の島(島内)、大船駅〜鎌倉駅など、観光エリアを幅広くカバー
購入方法:当日でもスマホから「EMot」で簡単に購入することができます
料金:おとな 700円 / こども 350円
江ノ電バスで、体力を温存しながらスマートに湘南・鎌倉周遊を満喫しませんか?

▲境内入口にある仁王門。左右には勇ましいポーズをした仁王像が睨みをきかせています
藤沢駅から江ノ電バスに揺られて20~30分ほど。「大仏前」バス停で下車すると、すぐ目の前に「鎌倉大仏殿 高徳院」が表れます。朱色の仁王門をくぐり、券売所で拝観料を納めて境内へ。 鎌倉市内の仏像で唯一、国宝に指定されている青銅製の阿弥陀如来坐像は、あまりにも有名です。初めての方はもちろん、再訪の方も、その慈悲深いお姿と対面しながら、心穏やかなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

▲境内奥に鎮座する青銅製 阿弥陀如来像。1958年に国宝に指定されました
境内は「鎌倉大仏殿跡」として国の史跡にも指定されています。春の桜、夏の新緑、秋の紅葉や銀杏の黄金色。長谷の谷戸の豊かな自然に包まれた露座の大仏さまは、四季折々で異なる美しさを見せてくれます。

▲高さ約11.3メートル(台座を含むと約13.35メートル)、重量約121トンを誇る圧倒的な存在感
1252年に建立が開始されたとされるご尊像は、長い歴史の中で地震や台風、津波といった自然の猛威にさらされてきました。かつては大仏殿の中に安置されていましたが、建物が倒壊した後も、人々の篤い信仰によって守られ、修繕が繰り返されてきました。令和の今も、鎌倉時代から変わらぬお姿で私たちを迎え入れてくれます。
大仏さまの側面に回ると、胎内(内部)への入口があります。拝観料50円を納めて中へ入ると、そこには背中の窓から差し込む光に照らされた、静かで落ち着いた空間があります。鋳造の継ぎ目などを間近に観察でき、800年近く前の高度な技術と、歴史の重みを肌で感じることができる特別な場所となっています。

▲朝の早い時間帯は比較的混雑が少なく、落ち着いて参拝できるのでおすすめです
「かまくらや御ほとけなれど釈迦牟尼は 美男におはす夏木立かな」 歌人・与謝野晶子がその端正な顔立ちを美男子と称えた歌碑は、大仏さまの後方にひっそりと佇んでいます。広い境内にはベンチもあり、散策の途中に小休止するのにも最適です。 近年は海外からの参拝客も多く、旅の思い出に御朱印を授かる方も増えています。この機会に、歴史ある高徳院から御朱印集めを始めてみるのも素敵ですね。

▲江ノ電「長谷駅」から海の方角へ歩いてすぐ。大きなウィンドウ越しに店内の温かな雰囲気が伝わってくる、印象的なファサードが見えてきます
鎌倉大仏殿 高徳院の近くには、花寺としても人気の長谷寺や光則寺や個性的な雑貨店なども多い人気のエリアです。そんな長谷歩きの途中にぜひ立ち寄りたいのが、2025年春にオープンした「Kamakura korean dining monyeo(モニョ)」です。ハングル文字の看板と、韓国を象徴する赤と青のライトオブジェが目印です。窓の外には、踏切を通過する江ノ電がゆったりと走り去る――。そんな長谷らしい景色を眺めながら、本格的な韓国の家庭料理を味わえる一軒です。

▲真っ白な壁に馴染むアンティークの格子窓は、韓国から取り寄せたものだそう。その先には、おいしい香りが漂う厨房が続いています
風になびくモシという布苧麻(ちょま)の暖簾をくぐると、コンパクトながらも開放感のある居心地のよい空間が広がります。店主のセンスが光るインテリアを眺めつつ、座り心地のよいチェアに腰をかけてメニューを選びましょう。

▲一番人気の「モニョ アサリ スンドゥブチゲ」にオプションの有精卵をトッピング
お店のメニューは、唐辛子仕立ての豆腐スープ、スンドゥブチゲをはじめ、グクス(韓国の麺料理)や日本でもすっかり定着したキンパなど韓国の定番料理です。どれも厳選した材料を使い、現地の家庭的な調理法で丁寧に作られています。さらに嬉しいのが、フードは全て、グルテンフリーとなっており、一部は動物性材料も使わないヴィーガンにも対応しています。
さっそく、一番人気の「モニョ アサリ スンドゥブチゲ」をいただきましょう。黒い陶器の中でグツグツと音を立てる真っ赤なスープ。中には絹ごし豆腐と、国産の大粒アサリがたっぷりと隠れています。
大根や玉ねぎなど6種類の野菜からとったベースのスープは、100%植物性(プラントベース)。そこにアサリの濃厚な旨みが溶け出し、奥深いコクと程よい辛味が口いっぱいに広がります。
付け合わせの「えごまの葉の醤油漬け」で熱々の白ごはんを包んで食べるのも、モニョならではの楽しみです。大葉とはひと味違う、独特で優しい香りがクセになります。自家製のカクテキや、漬け汁まで飲み干したくなる「白キムチ」も絶品。追加オーダーした有精卵を熱々のスープに割り入れれば、味わいはよりまろやかに。韓国からの旅行客からも「懐かしくて優しい」と愛される理由がよくわかる、滋味深いおいしさです。

▲「鎌倉キンパ」は、具沢山の太巻きのキンパにカクテキと白キムチ付き
白い磁器に美しく盛り付けられたキンパは、思わず写真に収めたくなる華やかさ。具材は人参やきゅうりに加え、厚揚げ豆腐が入っているのがユニークです。味の決め手となる香ばしい海苔は、地元・長谷の老舗「石渡源三郎商店」から仕入れているとのこと。ほどよく味付けされた具材の食感を楽しみながら、辛いのがお好きな方はコチュジャンをつけて“味変”を楽しむのもおすすめです。

▲パッチワーク柄の前掛けがカワイイ!伝統衣装「韓服(ハンボク)」で店頭に立つ恭子さんと結菜さん。店頭のタペストリー、和紙にプリントされた「赤ちゃんを抱く女性」もお二人のお写真なのだそう
店名の「monyeo(モニョ)」とは、韓国語で「母娘」という意味。「母娘でお店を営んでいるんです」と、接客を担当する母親の恭子さんが笑顔で教えてくれました。調理を一手に引き受けるのは、娘の結菜(ゆな)さんです。
韓国人のご主人と結婚された恭子さんとともに、10年近く韓国で暮らしていたという結菜さん。現地のおばあさまから教わった伝統的な家庭料理をベースに、年齢を重ねたお母さまの健康を気遣って自宅で作っていた「いたわりごはん」が、モニョの料理の原点なのだそう。
韓国料理と聞くと「刺激的で辛い」イメージがあるかもしれませんが、モニョの料理は、韓国の伝統的な健康自然食の文化を、現代的で優しい味わいに昇華させたものと言えそうです。ドリンクも、韓国の伝統茶「オミジャ(五味子)茶」から、人気の韓国ビール「TERRA」まで揃っています。
韓国の伝統家屋「韓屋(ハノク)」をモダンにアレンジした空間で、心まで満たされる韓国家庭料理を味わってみませんか。

▲極楽寺の入口にある茅葺屋根の山門。初夏には紫陽花が彩りを添えます
長谷で韓国の家庭料理を楽しんだ後は、由比ガ浜海岸や坂ノ下の路地を巡りながら、極楽寺まで足を延ばしてみましょう。長谷駅から極楽寺駅までは江ノ電でも移動できますが、この界隈は数々の映画やドラマの舞台にもなった風情あるエリアです。ゆっくりと歩けば、自分だけのお気に入りの景色やお店に出会えるかもしれません。

▲参道の突き当りにある本堂。北条氏の家紋「ミツウロコ」が見えます
極楽寺は1259年、北条義時の三男・重時によって創建されました。重時は六波羅探題として長年京都に滞在した後、鎌倉へ戻り幕政を支え、遂には自邸跡に寺を建立して自らも出家しました。開山として招かれた忍性(にんしょう)は、重時の息子たちの支援を受け、病人や貧民の救済、施療といった社会福祉事業に尽力したことも有名です。また、橋や道路の整備といった土木事業も積極的に手掛け、生涯を民衆の救済に捧げました。こうして発展した極楽寺は、鎌倉時代には七堂伽藍や多くの支院が立ち並ぶ、真言律宗の名刹として繁栄を極めました。

▲境内右手にある大師堂。鎌倉三十三観音霊場の二十二番札所として如意輪観世音菩薩が祀られています
往時には十三重塔や金堂など多くの建物が並んでいた広大な境内も、度重なる地震や台風、火災などの災厄に見舞われ、次第に衰微していきました。しかし現在まで継承される重要文化財を含む数多くの寺宝が、かつての盛時を今に伝えています。

▲ソメイヨシノが満開の頃の極楽寺の参道
境内奥にある宝物館(拝観料300円)には、木造釈迦如来立像や坐像といった重要文化財が収蔵されており、例年、春(4月25日〜5月25日)と秋(10月25日〜11月25日)の期間限定で公開されます。公開日は期間中の火・木・土・日曜(10時〜16時)で、雨天時は休館となります。(※ご本尊の開帳は毎年4月7・8日のみ)
江ノ電「極楽寺駅」のホームからも見える山門。その先に伸びる参道は、春にはソメイヨシノで淡いピンク色に染まります。初夏の紫陽花、盛夏の百日紅、そして冬に咲く椿や水仙など、境内は一年を通じて凛とした趣に包まれています。日常を忘れる静謐なひと時を求めて、極楽寺を訪れてみてはいかがでしょうか。

▲極楽寺山門から歩いて3分ほど。お店のすぐ先には、熊野新宮(神社)があります
名刹のあとは、午後のコーヒータイムを楽しみましょう。鎌倉らしい長閑な雰囲気が漂う極楽寺地区にある「Cafeみなづき」は、美味しいコーヒーをゆっくり楽しめるお店として、地元のお客さまを中心に重宝されています。店主が手作りするプリンやシフォンケーキ、そしてお母さま手づくりのスパイスカレーも評判です。

▲まるで友人宅のリビングのような雰囲気の店内。秋や春には特等席となるテラス席が軒先にあります
もともとご祖父母のお家だった建物を改装し、2021年10月にオープンしました。都内ご出身の店主 北村さんは、小学生の頃から毎週末のように鎌倉・極楽寺へ通う根っからの鎌倉好き少年だったそう。東日本大震災後に、ご祖父母からこのお家を引き継ぎ、もともとお料理が得意なお母さまとコーヒー好きだった北村さんのお二人でお店を開きました。お二人とも6月生まれということで、「みなづき(水無月)」という店名に。
鉄道旅が趣味という北村さんは、江ノ電や極楽寺駅の歴史についても古くからの知識をお持ちです。コーヒーを待ちながら、そんな旅の話に耳を傾けるのもここならではの楽しみです。

▲10時間ほどかけて丁寧に抽出する「水出しアイスコーヒー」は、高徳院近くの「CHEEERS COFFEE」の豆を使用
メニューは、コーヒーと紅茶を中心に、北村さん自らが作るプリンとシフォンケーキの2種のスイーツ。そして都内の老舗スパイス系カレー店でお手伝いをしていたこともあるというお母さま渾身のスパイスカレーを提供しています。
丁寧に湯煎焼きされたプリンは、驚くほど滑らかでとろけるような食感です。卵の濃密なコクと、甘すぎない絶妙なバランスも、大人の味わいです。深煎りのアイスコーヒーとの相性もよく、ご一緒に注文されるお客さまが多いというのも頷けます。
「ほとんど卵で味が決まりますよね」とは、店主の北村さん。プリンで使用する卵は、栃木県の養鶏場から仕入れているというこだわり様。「シフォンケーキの色が濃いのも、同じ卵を使っているからです」。ふんわりと柔らかなシフォンケーキの生地も、味わい深く。添えられた手作りのマーマレードジャムと一緒にいただきましょう。

▲オーダーが入ってから豆を挽き、一杯一杯ハンドドリップで淹れるホットコーヒー
「ホットは、アイスコーヒーとは別のロースターの豆を使っています」と、北村さん。ホットコーヒーには、地元・極楽寺で知る人ぞ知る会員制・完全予約制ロースター「極楽寺珈琲豆店」の中煎り豆を使用。オーダーを受けてから豆を挽き、丁寧にハンドドリップで淹れる一杯は、雑味がなく豆の個性をすっきりと引き出した味わいです。

▲この日のコーヒーは「ボリビア」。産地は極楽寺珈琲豆店からの仕入れ次第で変わってゆくそうです
北村さんは、お店を開いた後もコーヒー豆や淹れ方などの研究を続け、その中で偶然出会ったのが、極楽寺珈琲豆店だったと言います。豆の選定にはじまり、焙煎前には生豆を水洗いするなどの手間暇をかけ、焙煎度合いも中煎りから中深煎りで仕上げるというこだわりのロースターがお近くにあるとは、すごい出会いですね。
カップにたっぷり注がれたコーヒーを口に運べば、雑味の少ないキレのある味わいは飲みやすく、ゆっくりと身体に沁みこむような優しさを感じます。静かな極楽寺エリアにある隠れ家のようなお店で、友人と話したり、本を読んだりと寛いで過ごすひと時は、贅沢な時間となりそうです。
極楽寺散策に合わせて、ぜひお立ち寄りください。

▲江の島サムエルコッキング苑会場を中心に江の島や片瀬海岸一帯も会場となる「湘南の宝石」。寒い季節だからこそ空気が澄み、星空とイルミが夜空に映えます!
極楽寺周辺の散策のあとは、極楽寺駅から江ノ島駅へ移動し、江の島まで足をのばしてみませんか。
江の島の冬の風物詩「湘南の宝石」が、2026年2月末まで開催されます。関東三大イルミネーション、そして今回はじめて「日本三大イルミネーション」に認定されるこのイベントは、江の島から片瀬海岸一帯までがまばゆい光に彩られる、まさに「光と色の祭典」です。
最大の見どころは、江の島シーキャンドル(灯台)を中心に直径70m超も放射線状に結ばれた「光の大空間」です。降り注ぐような光のカーテンは、思わず息を呑むほどの美しさです。また、クリスタルビーズが煌めくトンネル「湘南シャンデリア」など、どこを切り取ってもフォトジェニックな景色が広がります。おすすめは、空が淡いピンクから群青色へ染まる「マジックアワー」の時間帯とイルミネーションの協奏です。富士山の夕景も含め、この場所だけの幻想的なひとときを堪能できます。海風を感じながら、心まで満たされる特別な冬の散策へ出かけてみませんか。

▲電車でのお帰りは小田急線「片瀬江ノ島」駅もしくは江ノ電「江ノ島」駅をご利用ください
江の島の入口、江の島弁財天仲見世通りに建つ青銅の鳥居から小田急線「片瀬江ノ島」駅までは、江の島弁天橋を歩いて渡って約13分です。同じ青銅の鳥居近くにある「江の島」バス停からは、「藤沢駅行」や「大船駅行」のバスも運行しています。平日、土休日ともに18時~20時間は1時間に1-2本程度の便があります。往路同様に、帰路の路線バス乗車も便利です!
電車と路線バスを組み合わせて、鎌倉~江の島周遊の旅をお楽しみください。
取材 ALOHAS
※掲載情報は2025年12月取材時点のものです。