鎌倉時代のみならず幕末まで相模湾を広く見渡すことができる要所とされた小動(こゆるぎ)岬。江の島と七里ガ浜の間に突き出した小高い場所に小動神社もあり、浮世絵でも江の島と一緒に描かれることの多かった名所です。その小動岬の路地裏に2024年3月にオープンしたのがRajah Coffee(ラージャーコーヒー)です。鎌倉で海辺に最も近い焙煎工房併設のコーヒー専門店として毎朝7時半から営業しています。
「もともとコーヒーが好きで、自分で焼いた豆で淹れるコーヒーの美味しさに目覚めまして。10年ほど前から趣味で焙煎をしていました」とは、焙煎を担う伸之さん。学生時代は大手コーヒー専門店でアルバイトとして働いていたという、優夏さん。コーヒー好きの二人が出会い、結婚を機に鎌倉の海の近くでコーヒーのお店を開くことを具体的に考えるようになったそうです。
大阪の町工場で作られたという容量も大きく火力も強い真新しい焙煎機に慣れるため、お店の開店までは試行錯誤が続いたとか。開店からひと月以上が経ち「安定した品質で提供できるようになりました」と、焙煎士としての道を歩み始めた伸之さん。
豆はアフリカや南米などの産地を中心に扱っているそうですが、栽培された地域や品種、また収穫後の工程、そして焙煎の仕方によっても味わいや香りも大きく異なるそうです。
「焙煎したてのフレッシュな豆の香りも良いですが、品種によっては焙煎から1週間程度経過した頃に新しい香りが出てくるようなこともあるんです。」それぞれの豆に向き合い、持っている個性を引き出すような焙煎を心がけている姿勢が伝わってきます。
オーダーできるコーヒー豆の種類は、常時7種類ほど。香りを確かめながらオーダーすることができます。風味に限らず、産地や品種のこと、焙煎について質問すると、詳しい説明で応えてくださります。
そしてコーヒーと一緒にオーダーしたいのが、優夏さんが担当するスイーツです。見た目がどこか懐かしい「蒸しプリン」は、ほどよい固さなのに滑らかな口どけという食感も好評とのこと。程よい甘さで、コーヒーとの相性も抜群です。
アイスコーヒーは、12時間かけてゆっくりと抽出する「水出しアイスコーヒー」と、写真のようにドリップした熱いコーヒーを直接ロック氷で冷やして提供する急冷の「アイスコーヒー」の2種類を用意。ホットコーヒーより多めのコーヒー豆を使い、氷が解けても最後までコーヒーの味わいが薄まらないようにしているそう。専門店のこだわりが、素敵です。
コーヒー以外のメニューとして人気なのが自家製のクラフトコーラとのこと。コーラと言えば黒色という先入観を覆す鮮やかな色に驚きます。クローブ、シナモン、八角など7種類のスパイスやハーブを使っているそうで、酸味もある爽やかな風味です。
甘味はプリン以外に自家製ケーキも常時2-3種類用意されているそうで、小麦粉を使わないグルテンフリーの米粉で作るケーキの用意も。優しい甘さ加減で、朝食や軽食にもぴったりです。
1階の入口で注文と会計を済ませて階段を上がると、大きな窓からは相模湾も見える居心地のよい客席が10席ほど。コーヒーをいただきながら本を読んだり、友人と語らうにはぴったりのスペースです。お店は朝7時半から夜7時まで営業されていますので、夕暮れ時にゆっくりとコーヒーを楽しむのも良いですね。
開業前、実はお二人とも医療のお仕事に就かれていたそう。まったくの異業種からの転身、コーヒー専門店を開く夢を実現させました。
サーファーでもあるという伸之さんは「開店後も忙しくて、目の前が海なのに、まだ腰越の海には入れていません」と、はにかみます。「この場所ですから、地元のサーファーの皆さんにも普段使いしてもらいたくて、朝早くからお店を開けることにしました」と、優夏さんが続けます。
店内で淹れたてのコーヒーを楽しむのも良いですが、テイクアウトして浜辺で味わうコーヒーは、格別な体験になりそうです。鎌倉の海辺に最も近い工房で焙煎された至福のコーヒーを味わいにRajah Coffee(ラージャーコーヒー)へ、ぜひお出かけください。
取材:ALOHAS
※掲載情報は2024年4月取材時点のものです。
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