妙法寺の創建は建長5年(1253年)、日蓮聖人が鎌倉松葉谷(まつばがやつ)を布教の拠点と定め、小庵を結ばれた地に建立された霊跡寺院といわれています。鎌倉駅東口から徒歩15分ほどの大町というところにあり、周辺には日蓮ゆかりの寺社が点在しているので、歴史を紐解きながら当時に思いを馳せて散策するのもおすすめです。
室町時代に建立され、鎌倉市指定文化財でもある総門をくぐり、受付で拝観料(300円)を支払うと、火を灯したお線香をいただけます。四季を映す山野草に囲まれた参道を進み、まずは本堂を参拝。妙法寺は境内の苔に覆われた石段が有名で「苔寺」との愛称でも親しまれています。
順路に沿って歩くと程なく、朱塗りの仁王門が見え、その先に木洩れ陽に輝く青々とした石段を眺めることができます。
▲苔の見頃は新緑が美しい4月~6月ですが、緑色に苔むした姿は一年中眺めることができます
苔の保護のために階段自体は通れませんが、並行した迂回路の石段を上っていくと法華堂に辿り着きます。
緑に覆われた美しい鐘楼を正面に眺めた後は、石段を眼下に見下ろしてさらに石段を上り、日蓮聖人が20年に渡って住んだといわれる松葉谷御小庵跡へ。ここからは傾斜のある山道を登ります。
▲文化年間(1804年〜1818年)に水戸家により建立された法華堂。本尊は日叡上人作の厄除祖師
辿り着いたのは、後醍醐天皇第三皇子であり、大塔宮(おおとうのみや)と呼ばれた衛良親王(もりよししんのう)のお墓。そしてその向こうに広がるのは、稲村ガ崎と相模湾の絶景です。天気が良ければ富士山を望むことができる、鎌倉の隠れたビュースポット。空気が澄んだ冬におすすめの散策路としても楽しむことができます。
このほかにも境内には、御松庵跡から谷戸を奥に入って行くと、日蓮が妖怪を退治した云われる化生窟(けしょうのいわや)というやぐらや、中央に釈尊、左に妙法稲荷大明神、右にはかつて熊本城天守閣に祀られていた細川家寄進の加藤清正公像が安置される大覚殿など、鎌倉らしい風景に出会うことができます。拝観の際はぜひ歩きやすいスニーカーなどがおすすめです。
▲後醍醐天皇第三皇子であり、日叡上人の父である衛良親王のお墓
▲供養塔の背後には、市街地と海を見渡す絶景が広がり、晴れた日には稲村ガ崎の向こうに富士山を望むことができます