江ノ電「七里ヶ浜駅」から海を背に長い坂道を上り15分ほど、丘の上の住宅街にひっそり佇む小さなパティスリー【稲村ヶ崎洋菓子店】。店主は、鎌倉山にあるチーズケーキの名店として名高い【ハウス オブ フレーバーズ】で26年間シェフを務めた小林さん。2024年に独立し、5月にご自宅の一階に店をオープンしました。
こだわりは、 “限りなくシンプルに、澄んだ美味しさ” の追求。奇をてらわずに、素材と製法にこだわった素朴ながら味わい深い焼き菓子を揃えています。一つひとつに丁寧な仕事ぶりが伝わる凛とした佇まいと洗練された味わい、クラシカルなようで新しい、これまで出会ったことのない、余韻の残る美味しさに出会える、そんなお店です。
▲トップのクリームが水面の波紋のように見えることから、常連である作家の甘糟りり子さんが命名したというバタークリームのケーキ「水面」。爽やかな杏のジャムをサンドし卵の風味を生かしたしっとりとした味わいのスポンンジと、なめらかでこっくりとした優しい甘さで口溶けのよい上質なバタークリームが見事に調和した懐かしさと新しさを感じるケーキです。お砂糖で化粧がけしたアーモンドの食感がアクセントに
▲コロンと丸く絞ったクリームが愛らしい「キャロットケーキ」。しっとり焼き上げたカルダモン、ナツメグ、シナモンなどスパイスの効いたコクのある生地と調和するよう、レモンの効いたほんのり甘酸っぱいチーズクリームを多めに添えました。少し厚めにカットして常温に戻して食べると、クリームがより滑らかになるのでオススメ!
▲目印は、木製のシンプルな看板と、手作業で積み上げたという大谷石の石垣。春にはシンボルツリーである「ヒトツバタゴ」(別名ナンジャモンジャの木)が純白の可憐な花を咲かせて出迎えてくれます
▲木の扉を開けると、凛とした空気が漂う柔らかなランプのあかりの灯る店舗スペース、左手奥に工房を備えています。アンティークの木製ショーケースにはサンプルの焼き菓子が並び、季節ごとにゼリーやプリン、タルト、収穫から手掛ける夏蜜柑のコンフィなども並びます
▲一つひとつ丁寧な製法で焼き上げられた焼き菓子は手土産やギフトにもぴったり。写真手前は、次男の聖さんがサーフィン上がりのエネルギー源にしているというオートミールとナッツたっぷりの「カウボーイクッキー」(以後、時計回りに)、ほろりと崩れるサブレに上質なバタークリームとラム酒がほんのり香る「レーズンサブレ」、香ばしいナッツがアクセントのカカオの香り高い「アーモンドのブラウニー」、外はさっくり中はしっとりと。焦がしバターのコクとアーモンドプードルの風味を堪能する「フィナンシェ」
▲焼き菓子詰め合わせは、大切な方へのギフトや鎌倉手土産にぴったり
▲中央の壁には、店のロゴにもなっている能面の「翁」が飾られています。翁の能面は祝言曲で使われるもので、五穀豊穣や天下泰平の祈り、安らぎの象徴。能面彫師である小林さんの大伯父にあたる方の作品で、子どもの頃から馴染み深い存在だそう
▲店主の仁さん(右)と次男の聖さん。仁さんは、1997年より料理研究家ホルトハウス房子氏に師事し、鎌倉山の名店「ハウスオブフレーバーズ」にて26年間シェフを務め、2024年独立。聖さんは父の背中を追うべく、現在は他店でパティシエとしての修行を重ねています。父子とも大のサーフィン好き。「パティシエとして一度必死にやってみたい」と意気込む聖さんに「波がある時は、そっちを優先していい」と、仁さん。どんなお父さんか伺うと「職人気質で厳しいけど、決して間違ったことは言わない」と聖さん。父子であり師弟関係にあるお二人の、この先の未来にどんな作品が誕生するのか楽しみです
▲侘び寂びを感じる和の佇まいが美しい設え。店内もエントランスも、季節に寄り添った花々がそっと彩ります