長谷駅の改札を出て、長谷大仏とは逆、海岸方向へ歩いて1分。壁に店名サイン、エントランスにオリーブやサボテンなどの植栽を配したお洒落なファサードのお店がフレンチレストラン「sirius」です。
地元鎌倉の野菜や魚介はもちろん、日本各地の生産者から直接仕入れた旬の食材を使い、フレンチをベースにした料理をカジュアルな雰囲気で楽しめます。
オーナーシェフの加藤光一さんは、東京・飯倉の老舗イタリア料理店「キャンティ」で料理の道に入り、その後、表参道のフランス料理の名店「ラ・ブランシュ」で野菜の名手と謳われる田代シェフに師事し修行。池尻大橋の「デュバリー」等、有名レストランのシェフを経て、2022年10月に鎌倉・長谷に自らの店、「sirius」をオープンされました。
siriusのメニューは昼夜共通のコース料理3種。「本日の一皿、メイン(魚か肉のどちらか)、デザート(3,850円)」、「シェフのおまかせ4皿ほどのお料理(7,700円)」、「シェフのおまかせ7皿ほどのお料理 (11,000円)」で、すべてのコースにパンとコーヒー(またはハーブティー)が付きます。また、ディナータイムのみアラカルトメニューの用意もあるそうです。
「シェフのおまかせ4皿ほどのお料理」は季節のバリエ、魚料理、肉料理、デザートの4皿にパンとコーヒーという内容。スターターとなる季節のバリエとは「鎌倉野菜を中心に使ったバリエーションサラダ」のことで、鎌倉や日本各地から取り寄せた旬の野菜を15種類以上使った贅沢なサラダ。素材ごとに異なる調理法を用いて、野菜の味を存分に引き出しています。皿の端に添えられた4種類のドレッシング(大葉、レモングラス、こぶみかんとエシャロット、塩レモン)はエスニック風味があり、何とも爽やか。さらに、この日は琵琶湖産の活け稚鮎のフリットがトッピングされていました。野菜とトッピングのバリエーションは様々で、これを食べたくて何度も通うお客様も多いそうです。
身はふっくら、皮目に残した鱗はサクサクの甘鯛のポワレに合わせるのは、解禁したばかりの富山の白エビと味が深い大阪産有機たけのこ、そして、山菜のこごみ。バジルとたけのこのコンソメソースと甘鯛の身を一緒にいただくと、口の中いっぱいに春の香りが広がりました。
幻の豚と言われ、めったに市場に出回ることがないという千代幻豚。長野県・飯田の岡本養豚で抗生物質や発育促進剤を使わず、ゆっくり7か月かけて育てられた豚で、旨味が強く、さっぱりとした甘みのある脂身が特徴です。この日のメイン料理では、ロース肉を炭火でグリルし、北海道産のアスパラガス、甘みのある淡路島の新玉ねぎと合わせてサーブされました。ソースは肉汁をベースに生姜と炭化させた玉ねぎの皮を使い、ガラムマサラがアクセントになっています。絶妙な火入れ加減で、噛みしめると肉の力強い味わいと脂身の甘さが感じられました。
小麦の香りが素晴らしく、外はカリッ、中はもっちりとした食感です。数々の手の込んだ料理ばかりか、カンパーニュまで自家製の焼きたてとは驚きです。
ピンクグレープフルーツの上にチーズのムース、さらにトンカ豆(杏仁や桜に似た芳香のスパイス)で香りづけしたアイスクリームをトッピングし、仕上げに泡状にしたほうじ茶をふんわりとかけたもの。グレープフルーツの酸味、チーズの塩味、アイスクリームの甘みが複雑なハーモニーを奏で、最後にほうじ茶の香ばしさが鼻に抜けてすっきりと締める。大人の味わいのデザートでした。(デザートはコース料理すべてに付いています。)
料理とワインのペアリングもフランス料理の愉しみの一つ。カウンター席でアラカルトメニュー(ディナータイムのみ)の一品をつまみながら、ソムリエ兼スーシェフの佐竹さんにお勧めワインを訊いてみるのもいいですね。
「シンプルに素材を活かす料理が中心のイタリアンで料理人としてスタートし、そのあと、様々なソースや素材の組み合わせを重視するフランス料理の修行をしたことが、今の自分の料理につながっています。」と語る加藤シェフ。この日の料理の説明を求めると、次々に日本各地の生産者の名前が出てきました。この野菜はレンバイ(鎌倉農協連即売所)の○○さん、豚肉は長野の○○さん、魚は・・・・。料理の研鑽を重ねる中で出会った食材や生産者との繋がりを大切にしている加藤シェフ。厳選された素材の美味しさを引き出し、それを生かす調理法でクリエイティブな一皿を次々と創り出しています。
店名のsiriusは加藤シェフの名前「光一」と、おおいぬ座の一等星Sirius(地球上から見える最も明るい恒星)に由来したものとのこと。フランス料理の新星「sirius」が、長谷に輝く一等星になる日も近いかもしれませんね。
取材 ALOHAS
※価格はすべて税込です。
※別途サービス料10%がかかります。
※料理の内容は季節や食材によって変更があります。
※掲載情報は取材日時点(2023年4月)のものです。