#湘南サステナブルライフ②

いま、私たちにできること。鎌倉でソーシャルグッドな週末を体験してみよう

より良い社会を目指しSDGs(持続可能な開発目標)が謳われる中、私たちにもできることって? 自然に恵まれ、従来から環境に対する意識が高い鎌倉は、気軽に参加できるビーチコーミングや、ごみを再活用するアップサイクルのワークショップも盛んです。「楽しい」が「ちょっといいこと」につながる時間の中で、学びと発見の思い出作り、してみませんか?

【流木工房 鎌倉島】ビーチコーミング&ビーチクラフトを通して学ぶSDGs

鎌倉と言えば、海を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。最初にご紹介する【流木工房 鎌倉島(りゅうぼくこうぼう かまくらとう)】で人気のビーチコーミング講座は、海をテーマにしたSDGsのワークショップです。まずは、ビーチガイドの原嶋孝夫さんとともに由比ヶ浜を散策。漂着物を収集しながら、海辺の自然・歴史・文化遺物まで、様々なレクチャーを聞くことができます。

▲ビーチコーミングに始まり、SDGsのワークショップは、今や原嶋さんのライフワーク。漁師さんの手伝いをしながら、由比ヶ浜についての知識を深めることもあるのだとか

▲3年前にオープンした【流木工房 鎌倉島】では、ビーチコーミング講座の他、ビーチクラフトワークショップも人気。江ノ電・長谷駅より徒歩5分、海までは徒歩1分ほど

「ビーチコーミングは、ごみ拾いとは違うんです。宝探し、と言った方が近いかな」と原嶋さん。古都・鎌倉ならでは、時には古い動物の骨や文化遺物などが見つかることも! 「ごみというより文化が流れ着いている。ごみと捉えられてしまうものも、宝ものになったり資源になったりするんです」

寄せては返す波の音を聞きながらビーチを歩く心地よさは格別。そして、足元には多彩な発見が。取材日には、右から文字が横書きされたヴィンテージボトルを収集しました。

▲工房に飾られた原嶋さんのボトルディギングのコレクション。「鎌倉にはコーラのボトルが多い、戦後のアメリカ軍のもの。明治時代の白髪染めの瓶も見つけましたよ」と、それぞれに物語がある

講座の最後は収集品の発表と解説の時間。ここでしか聞けない原嶋さんの面白雑学もたっぷり! ビーチに漂着したものを思い出しながら、これはいつの時代のもので、なぜここにあるのだろうと思いを巡らせます。驚き、ロマン、そして海洋ごみ問題など、それぞれの気づきを得る時間です。

また、ビーチクラフトワークショップでは、鎌倉に漂着した流木、シーグラスや陶器片を使って、自分だけのオリジナルクラフト作品を作ることができます。

▲ガラス辺が波で研磨されてできる貴重な天然のシーグラスを使ったネックレス制作。およそ1時間半で世界にひとつの宝ものが完成

鎌倉の海の魅力を再発見し、海岸の美化にもつながる【流木工房 鎌倉島】のワークショップ。「予期せぬ出会いと発見の喜びにワクワクするし、有酸素運動にもなるし、海岸がきれいになることにもつながって、いいことづくめですよ。朝早めに来て、自分だけのお宝を見つけてくださいね」

【日本エコロジーアップサイクル協会】小さなアクションで価値をプラスし、ごみを削減

「アップサイクルとは、そのままではごみになってしまうものを、価値のあるものに変えること。」そう教えてくれたのは【日本エコロジーアップサイクル協会】理事長の木村俊平さん。ふだん、無意識に捨ててしまう紙袋、プラスチック製コーヒー袋、チョコレートの紙箱などを使い実用小物を作ることで、紙ごみやプラごみを削減する活動を行っています。

中でも、コロナ禍の需要もあって注目されている「鎌倉みんなでアップサイクル〜マスク入れ制作プロジェクト〜」。WeBase鎌倉で開催されているワークショップに参加してみました!

▲木村さんや講師の先生が丁寧に教えてくれるので、初心者や子どももチャレンジしやすい。完成までは20分ほど

▲道具も用意されているので手ぶらでOK。誰でも無料で参加できる

材料は、鎌倉の銘菓をはじめ色とりどりの紙袋。好きな柄を選び、ワークショップがスタートです。折る・切る・貼るといったシンプルな工程だけで制作でき、失敗もなく完成することができました。リサイクルは一度資源に戻して再生するコストや環境負荷がかかるのに対し、素材をそのまま活かせるアップサイクルは、よりサステナブルな取り組みだと感じました。

▲完成したマスク入れは製作者が持ち帰るほか、鎌倉の飲食店などに配布。その数は、鎌倉市内だけでも2,500枚以上になる

一度ワークショップを経験すると、「この柄、マスク入れにいいかも」と、今まで捨てるだけだった紙袋が気になってしまう人が続出するのだとか。SDGsや環境問題と言うと壮大な課題に感じますが、「自分にも何かできることがあると気付けて嬉しい」「没頭することでストレス解消にもなった」と、喜びの声も多々。「私もそうですが、まず、つくることって単純に楽しいですよね」と木村さんもにっこり。

▲アップサイクルクリエイター『折人- OribitO -』としても活動する木村さん。フランス産小麦粉の袋を使ったエコトートバッグのワークショップや、由比ヶ浜でとれる桜貝を使ったスマホケースづくりも人気(詳細は折人ホームページへ)

「家に溜まっている紙袋がもったいないな......」そんな小さな気づきから木村さんの活動は生まれました。今後は、ビーチコーミング、マルシェ、ワークショップを兼ねた『湘南アップサイクルフェスタ(2022年5月28日~29日予定)』も計画中とのこと。「最近では環境問題の話をよく耳にするようになりましたが、ぜひ鎌倉に来て実際に体感してほしいですね。」

最後に教えてくれたのは、「Plus One Role」というメッセージ。「捨てられてしまうものに付加価値をプラスする、自分にももうひとつ役割をプラスしてみるという意味を込めました。」江ノ電・由比ヶ浜駅から徒歩3分と好アクセス、周りにはグルメスポットや名所も多いので、観光ついでに気軽に体験してみてはいかがでしょうか。

マスク入れ制作ワークショップは毎週木曜10:00~13:00と土曜13:00~16:00に、WeBase鎌倉で開催中。詳細は日本エコロジーアップサイクル協会のホームページをご確認ください。

【ゴミフェス532】ごみの課題を楽しく解決する部活動

【ゴミフェス532(ゴミニティ)】とは、ごみの課題を楽しく解決するために、鎌倉市民を中心としたメンバーそれぞれが興味をもった活動に参加し取り組む、“部活”のようなコミュニティ。立ち上げは2020年、ITの知識やツールを使い鎌倉のまちの活性化を支援する『カマコン』定例会で、ごみ削減のプレゼンが盛んに行われたことがきっかけだったそう。

笑顔が増える、ごみが減る取り組みのひとつとして、毎週土曜日の午前中は、身近な場所でごみ拾いをしてSNSに投稿する「オンラインごみ拾い」が行われています。

▲投稿ハッシュタグは「#ゴミフェス532」、「#ゴミフェス532ごみ拾い」。オンラインを通してごみ拾いのアクションをつなげ、広げていく

単に課題とするだけでなく、ITも駆使して、たくさんの人を巻き込みながら面白がる姿勢は、鎌倉らしさ満載! もともと全国でも高いリサイクル率を誇る鎌倉ですが、由比ヶ浜に打ち上げられたシロナガスクジラの赤ちゃんの胃の中から海洋プラスチックが見つかったことも記憶に新しく、ごみに対する問題意識は年々高まっています。

2021年5月30日の『ゴミゼロの日』には、鎌倉市民、団体、企業、行政が連携し第1回の【ゴミフェス532】が開催されました。「人間は毎日何かしらのごみを出して生きている。そのごみについて関心があり、自分たちから減らしていこう、行動を起こそうという人がこんなにいるとは思いませんでした。楽しくアイデアを持ち寄ってやっていこう、そんな思いで仲間ができ、自分でできることの力をみんながそれぞれ発揮してイベントが開催できたことを本当に嬉しく思います」と、【ゴミフェス532】運営スタッフの平野リエさん。

▲コロナ禍でオンライン開催となった第1回目の【ゴミフェス532】だが、スタッフ・関係者など50名、市内外から168人ほど、0歳児から70代まで世代を超えて参加

「鎌倉のごみ これまでと今を知り“やってみたいこと”を話し合おう」、「はじめてのコンポスト生活」、「GOMI ZERO TO GO PROJECT 〜教えて小学生!ごみが出ないテイクアウトを考えよう!〜」などの多彩なトークショーに加え、アップサイクルのワークショップでは、ごみから生まれたとは思えない作品の可愛さに反響も大。

▲オンライン開催された、シーグラスや貝がらを使った「ビーチコーミング×ジュエリー」のワークショップ

▲カラフルな風呂敷エコバッグはなんとペットボトルから作られたもの。2種の結び方でさまざまなアレンジを学ぶ

第2回の【ゴミフェス532】は、2022年5月29日に開催されます。ごみ拾いやリサイクル回収の他、展示、ワークショップ、サステナマルシェ、フリーマーケットやトークショーなど盛りだくさんの予定だそう! ごみと言えば......のスペシャルゲストの登場も!? ごみの削減アイデアやコンポストの使い方など、暮らしの中で気になっていたことって実はたくさんあるものですよね。鎌倉のまちごと盛り上がる“文化祭”で、まずはごみについて楽しく知ることから始めてみませんか。

取材・文 二木薫
写真(鎌倉島) 市川紀元

※掲載情報は2022年2月末時点のものであり、変更になる場合がございます。