鎌倉に現存する唯一の尼寺【英勝寺(エイショウジ)】。
室町時代後期に関東で活躍した武将・太田道灌(おおたどうかん)の屋敷跡に創建されたお寺です。
開基の英勝院尼(お勝の方)は、太田道灌から数えて4代の孫・康資の娘で、徳川家康の側室だった人物です。
1636年、三代将軍家光から太田道灌の土地を譲り受け、英勝寺を建立しました。没後は、徳川水戸家の姫が代々住職をつとめていたそう。江戸時代は水戸徳川家の庇護を受けて栄え、「水戸御殿」とも言われていました。
春には白藤やヤマブキ、夏にはアジサイ、秋にはヒガンバナや紅葉、冬にはスイセン、梅など一年を通して美しい植物が鑑賞できます。また、竹林も美しく、秋には燃えるように赤く色づくヒガンバナや紅葉との共演も楽しめます。
▲ヒガンバナの奥にある袴腰の鐘楼は神奈川県内でも珍しい建物です
また、太田道灌の有名なエピソードにこんなお話があります。
ある時、太田道灌は急な雨に降られ、雨具である蓑を借りようと一軒の農家を訪れました。「蓑を貸してくれ」と告げると、少女がヤマブキの花を道灌の前にそっと差し出しました。道灌は差し出されたヤマブキの意味が分からず、腹を立てて、雨に打たれながら城に帰りました。
後に、“七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞかなしき”という古歌を表していたと知り、「申し訳ありませんが家が貧しく蓑(実の)一つさえ持ち合わせていません」という意味だったと理解した道灌は、自身の未熟さに気づき、和歌の勉強に一層励んだそうです。
境内には、太田道灌にちなんでヤマブキも植えられています。
▲太田道灌にちなんで植えられているヤマブキは4月〜5月が見頃です
▲英勝寺の仏殿。軒に刻まれた十二支もぜひ見て欲しいポイントです