時には食に刺激を求め、脂っぽいものや辛いものを欲する時もありますが、非日常的な味を欲する時、ベトナム料理は一つの最適解かも知れません。藤沢市の姉妹都市でもある昆明市がある中国雲南省とも国境を接し、カンボジアやタイとも隣接するインドシナ半島の東側沿岸の国「ベトナム」。歴史的な背景から中国やフランスなどの影響を強く受けながらも、海に面した土地で育まれた独自の食文化を発展させ、いま注目を集めています。
生春巻きやフォー、さらにはバインミーなど日本でもすっかり定着した感のあるベトナム料理ですが、「本場のベトナムの家庭の味が楽しめる」と評判のお店が藤沢市にあります。2008年に横須賀から移転オープンした【シクロ本鵠沼店】です。本鵠沼駅から歩いて9分ほどの場所にある、ベトナムご出身のご家族が営むお店です。
▲店名「シクロ」は、ベトナム語で三輪車を意味するそうです。窓にはカラフルなシクロの絵が描かれています
ファミレスのようなテーブル席が並ぶフロアは、どこかアットホームな雰囲気が漂っています。グループでのご来店が多いそうですが、お一人さまでのご来店も大歓迎とのこと。平日のお昼は、生春巻きなど前菜3品の盛り合わせとメインのお料理(10種類から選ぶ)、さらにドリンクも付いたランチセットが人気です。平日夜と週末は、80品目を超えるグランドメニューからお料理やスイーツ、ドリンクなどを自由に選んでオーダーすることができます。
▲平日限定ランチセットメニューに含まれる前菜プレート。ベトナム老舗陶器ブランド「ミンロン」製のお皿は絵柄もかわいいです!
平日限定の「ランチセット」は、定番の生春巻きと日替わりの2品が前菜として提供されます。この日の2品は、「手羽先のヌクマム焼き」とベトナム風お好み焼きと言われる「バイン・セオ」でした。ヌクマムとは、ベトナム産の魚醤のことですが、その独特の香りはほぼなく、甘塩っぱい味付けは日本のテリヤキ風で、親近感を覚える風味です。バイン・セオは、米粉をベースにココナッツミルクやターメリックを混ぜて焼いたもので、ココナッツの甘さを感じるソフトな食感も新鮮。生野菜と一緒にサラダ感覚でいただくことができます。生春巻きは、甘酸っぱいタレをたっぷり付けていただきましょう。
▲昼夜問わず人気のフォーボー(牛肉のフォー)は、ベトナムの定番料理
ランチセットのメインの料理は、フォーやビーフンなどの麺類5品、ベトナム風角煮ごはんやグリーンカレーなどのご飯もの5種、全10種から選ぶことが出来ます。
ランチセットのフォーは、牛肉の「フォーボー」と鶏肉の「フォーガー」のいずれかを選びます。実は肉などの具材が違うだけでなく、スープもそれぞれ別で仕込んでいるのだそう。「フォーボーはコクがしっかりあるスープで、フォーガーはサッパリ系ですが旨味がしっかりあります」とは、店長の佐々木さん。
今回は、寒い季節に人気が高まるというフォーボーを注文。白濁したスープに平たいフォーの麺がたっぷり。さらに牛肉とパクチーがトッピングされて提供されます。スープは、こってり感はなくマイルドな味わいで、香菜の香りにエキゾチックさを感じますが、日本人の味覚にも合っていて食が進みます。レモンを絞って酸味を加えるだけでなく、さらにスリラチャソースやホイシンソースを加えたりしながら好みの味変を楽しむ上級者も多いのだとか。パクチーは、好みが分かれるところですが、苦手な人はオーダー時に店員さんに伝えると無しにもできます。(追加料金で増量もできます!)
▲野菜もたっぷり摂れる「揚げ春巻きビーフン」。平日のランチセットで選べるメイン料理のひとつ
こちらも人気メニューの「揚げ春巻きビーフン」です。揚げたての春巻きとたっぷりの生野菜などが盛り付けられ、その下には真っ白いビーフンが隠れています。ビーフンも米を原料にした麺で、どちらかと言えば炒めて食べるものというイメージですが、ベトナムでは、フォー同様に茹でていただくことも多いそうです。
豚肉やエビ、野菜や春雨などたくさんの具を包み、香ばしく揚げられた細めの春巻きは、生野菜やビーフンと混ぜあわせ、「ヌクチャム」という自家製タレをかけていただきます。ヌクチャムも魚醤がベースで、にんにくやトウガラシも入っていますが、香りも辛さも強くありません。甘酸っぱい味わいで食べやすく、揚げた春巻きも、たっぷりの野菜といただくことで重たさを感じません。「ベトナム料理はヘルシー」を、体験できる一品です。
ランチセットでは、「カオマンガイ」や「グリーンカレー」など、インドシナ半島の反対西側に位置するタイ国の定番料理から選ぶことも。ハーフサイズのフォーや揚げ春巻きも追加でオーダーできますので、東南アジアの美味しいものを一度に楽しむなんてこともできますね!
▲甘さと苦さのバランスが絶妙なベトナムコーヒーとベトナムのスイーツ「チェー」
エスプレッソのように深くローストしたベトナム産コーヒー豆を専用の金属製ドリッパーで抽出するベトナムコーヒーは、食後のひと時の余韻を楽しむのにぴったりの一杯です。ドリップされたコーヒーと甘いコンデンスミルクをよーく混ぜて、楽しみましょう。
実はベトナムは、世界第二位のコーヒー豆生産国でもあり、彼の地では独自のコーヒーの楽しみ方が定着しているのだそう。例えば「エッグコーヒー」や「ソルトコーヒー」、さらには「ヨーグルトコーヒー」など多様な楽しみ方が定着し、老若男女が嗜む日常的な飲み物となっているそうです。
▲ロングタイピカという長い形状のタピオカと小豆や緑豆の甘納豆も入ったチェー
また、タピオカや煮豆を乾燥させ砂糖をまぶした甘納豆などを使ったベトナム発祥の「チェー」も、ストリートからレストランまで、どこでも求めることができる人気のスイーツ的なドリンクとのこと。シクロのチェーは、牛乳とココナッツミルクをベースに、小豆や緑豆の甘納豆とピンク色のロングタピオカ、さらにはバニラのアイスクリームと具沢山。クラッシュされた氷も入っていて、もちもちのタピオカの食感のコントラストも面白いです。冬はホットのチェーも人気で、白玉入りなどもメニューに並んでいます。いろいろと試したくなりますね。
▲シクロでは、ベトナムご出身のスタッフさんが調理を担っています。本格的な味わいは、現地の味で育った調理人がいてこそ!
お店を切り盛りするのは、2歳の時にご両親と一緒に日本に移住し、後に帰化したという佐々木さんです。姉妹店の【シクロ湘南藤沢南口店】が本店で、他にも横浜や辻堂にも姉妹店があり、家族経営でベトナムの家庭料理店を営んでいるそうです。
さすが専門店だけあって、フォーやバインミーなどの食事系はもちろんのこと、サラダやお酒の肴になるメニューも豊富なのが嬉しいですね。グループで利用する際には、あれこれオーダーして、シェアして楽しみましょう。
火曜~土曜は11時の開店とのことで、江の島散策前の早めのランチでの利用はもちろんのこと、鎌倉江の島エリアを存分に楽しんだ後の、夜の食事にも重宝するお店です。湘南の海風が薫る鵠沼で、ベトナムの家庭料理とビールで一日を締めくくるのも、良い思い出になりそうです。
取材 ALOHAS
※掲載情報は2025年10月取材時点のものです。