内装は、北鎌倉を拠点に数々の古民家や廃墟同然の空き家などのリノベーションを手掛ける建築家・宮田一彦さんによるもの。店内には、お気に入りの温もりを感じるブラジル製の照明や、60年もののBRAUN製レコードプレイヤー、旅先で手に入れた小石などがさりげなく点在し、店主のエッセンスがあちこちにちりばめられています。
「稲村のゆるっとした雰囲気に合わせて、あまり肩肘張らず、来店された方が居心地の良い雰囲気でありたい」と話す店主の狩野さん。【隣(tonari)】という店名は、物件の立地や稲村という土地の雰囲気、日常に在る気軽に入れるお店でありたいという考えから、漠然と「向こう三軒両隣」という関係性の言葉を思いつき、そこからお店に来る方のお隣さん的お店を作ろうという思いで命名したそうです。
▲昭和の風情を残す長屋の一角に2024年12月にオープン。江ノ電「稲村ヶ崎駅」から徒歩約1分の立地にあり、海とは反対方向の静かな住宅街に位置しています
▲店内奥のスペースは、丁寧に淹れられたコーヒーと供にゆったりと思い思いのひとときを過ごせる極上の空間。主に住宅を手掛けている宮田さんによる店舗のリノベーションという噂を聞きつけ、立ち寄る建築ファンも多いそう
▲ホットコーヒーは香りが立つよう選んだ有田焼のカップで提供。「ハンドドリップコーヒー」。自家製の「エスプレッソ・クレームブリュレ」。クリームに混ぜるエスプレッソは、エチオピアやコロンビアなど日によって変わります
▲都内で企業プランナーとして勤務、コロナ禍でリモートが可能になり海と自然に囲まれた鎌倉で思い描いていたコーヒー店を開業したという狩野さん。コーヒーの産地はアフリカが好きで特にケニアとエチオピア産の豆が好み。ケニアは、トマトに似た酸味が綺麗で強くクリアな味わいと、焙煎をやり始めて初めて本当に美味しく焼けた思い出も重なり、1番のお気に入りだそう
▲「古きも新しきも良し」という感覚で、内装は古民家のリノベーションを手掛ける建築家にオファー。カウンターや壁に施された“押縁”と呼ばれる技法が店主のお気に入りのひとつ。狭い間口から細長く奥行きのある空間に、カウンター前から奥まで隙間なく設られたベンチシートも特徴的
▲隣(tonari)で扱うコーヒーは全般的に明るい酸味やとろっとした甘みのある味わいが特徴。アイスコーヒーは急冷式でドリップ。急速に冷やすことで、抽出されたコーヒーの味と香りをそのまま閉じ込めることができるそうです
▲プロダクトデザイナーのジャスパー・モリソンのグラスは自宅でも愛用。セレクトの基準は、まずは自分自身が使って満足のいくもの、もちろんお店の方のリアクションも見ながら新しいものにもチャレンジ
▲豆は、常時3〜5種。年間を通し、その時期のニュークロップと呼ばれるもの、トップスペシャルティとされる上等なものをセレクト。自分たちなりに感じる「生産者のベストな味を出したい」という思いから、香りや味わいの特徴が出ることで豆の個性が際立つよう、全て浅煎りにこだわっています