龍口寺
リュウコウジ

地震や飢饉、疫病などが続き社会が混乱していた鎌倉時代中期。人々の安寧を願い、幕府に「立正安国論」を提案したのが日蓮聖人です。しかし、その内容ゆえに弾圧を受け、ついには処刑の場へと連行されます。 役人により刀が振り下ろされようとしたその時、江の島の方角からまばゆい光が放たれ、処刑が中止されました。この「竜ノ口法難」の舞台こそが、現在の龍口寺です。命を繋いだ奇跡の地として、今も「難除け」を願う多くの参拝者が訪れています。

江の島の縁起にも関わる5つの頭を持つ五頭龍の口があった場所という伝承から「龍口（たつのくち）」と言われ、地名に残っています。龍口寺は、日蓮聖人が処刑を免れた「竜ノ口法難」の地に、直弟子である日法聖人が寺を建立し、開山しました。創建は延元年（1337）、山号は寂光山です。

江ノ電「江ノ島」駅のすぐ近く、電車が道路を走る「併用軌道」区間の交差点に、龍口寺の入口があります。 その付近、仁王門前にも多くの露店が立ち並ぶのが、毎年9月11日～13日の「龍口法難会（りゅうこうほうなんえ）」です。日蓮聖人の法難を偲ぶ龍口寺最大の法要です。特に12日の夕方と深夜には、難除けの「ぼたもち」が撒かれ、多くの参拝客の熱気に包まれます。

元治元年（1864）、大坂の豪商・加嶋屋作五郎の寄進により竣工した山門です。妻入り唐破風造りの屋根を持つ格式高い建築です。太い柱と深い軒が醸し出す安定感ある佇まいに、正面「龍口寺」、裏面「寂光山」の扁額が掲げられています。「十六羅漢」や中国の故事を描いた八枚の彫刻は、木目を活かした精緻かつ表情豊かな仕上がりが見事です。

令和3年（2021）に藤沢市指定重要文化財となった龍口寺本堂は、天保3年（1832）に完成した県内屈指の木造大建築です。総欅（けやき）造り銅板葺の威風堂々とした佇まいで、幕末期特有の開放的な構成と精緻な彫刻装飾が見事です。堂内は日蓮宗の基本形式である外陣・内陣・脇陣を備え、中央には中老僧・日法聖人作と伝わる日蓮聖人像や六老僧像が、脇陣には加藤清正公像などが鎮座し、厳粛な祈りの空間が広がっています。

明治43年（1910）に竣工し、神奈川県唯一の本式木造五重塔として知られる龍口寺五重塔。令和3年には藤沢市重要文化財に指定されました。「神奈川建築物百選」にも選ばれた総欅（けやき）造り銅板葺の優美な姿は、名工・十一代竹中藤右衛門が12年を費やし完成させました。地元藤沢の彫工・一元 安信（いちげん やすのぶ）による精緻な彫刻群が有名です。中国の故事が表情豊かに刻まれ、明治期の職人技術の粋を伝えています。関東大震災の激震にも耐え抜いた堅牢な構造を持ち、伝統と近代が融合した歴史的遺産として、今も静かに江の島周辺の地域一帯を見守り続けています。大本堂右手から進むと間近で拝観することができます。

「延寿の鐘（えんじゅのかね）」と名付けられた大きな梵鐘は、参拝者も撞くことができます。また大晦日に鳴り響く荘厳な鐘の音は、除夜の鐘として、片瀬や腰越一帯の近隣住民に長く親しまれています。

真南を向く、南アジアの宗教建築を模した真っ白い塔の内部には、ジャワハルラール・ネルー首相から授けられたという釈尊（ブッダ）の御遺骨が安置されています。塔の先端部分は、境川周辺、片瀬地域からも見え、平和の仏塔として親しまれています。

大本堂の左手から階段を登った先、仏舎利塔が立つ広場からは、相模湾越しの富士山や伊豆半島、丹沢大山の山並みも眺めることができます。仏舎利塔の手前にある七面堂から五重塔へ至る通路からは、大本堂の先に腰越漁港や江の島も望むことができます。参拝後に、ゆっくりと湘南ならではの景色をお楽しみください。

春は梅や桜、夏は百日紅、秋はイチョウを見ることができます。

日蓮宗の御経「法華経」の教えを表す「妙法」と記された御朱印。大本堂内では各種お守りも授与されています。御朱印受付は、9:30-16:00です。

・駐輪場　仁王門横にあります。
・駐車場　檀家用・参拝客用
・公衆トイレ　境内右手にあります。

・【おさんぽマップ】秋の腰越駅～江ノ島周辺をおさんぽ！