
▲賑やかな江の島弁財天仲見世通りで、厳かな雰囲気をたたえる岩本楼の入口。手入れされた松や梅の植栽が出迎えてくれます
片瀬江ノ島駅

▲賑やかな江の島弁財天仲見世通りで、厳かな雰囲気をたたえる岩本楼の入口。手入れされた松や梅の植栽が出迎えてくれます
金運や商売繁盛、また芸事や学業の神様である弁財天さまをお祀りする江島神社。江戸時代後期、関東近郊の庶民の間で、信仰と行楽を兼ねた「江の島詣(もうで)」が大ブームとなりました。
その江島神社の入口、竜宮城を模した瑞心門へ向かって真っすぐにのびる江の島弁財天仲見世通りは、現在も多くの茶屋や土産物屋が軒を連ね、朝から晩まで人の通りが絶えることはありません。この参道右手にあるのが岩本楼です。お寺やお屋敷のような石垣と塀、大きな石門に掲げられた岩本楼の看板が目印です。

▲和室から続く広縁(ひろえん)。窓を開ければ潮騒が聞こえ、庭木の先に相模湾が広がります
源頼朝をはじめ、北条時政らも成就祈念のため参拝した江島神社ですが、鎌倉時代のはじめ頃、岩屋本宮(現 江の島岩屋)や中之坊(現 奥津宮)を別当として管理していたのは、「岩本坊」というお寺でした。後に「岩本院」の称号が与えられ、宗教や経済も含め江の島全体を治めることに。同時に、江戸時代まで将軍や諸国大名の休憩処や宿泊所の役割も担ってきました。そして時代が大きく変わった明治7年に、「岩本楼」として旅館業をスタート。皇室のご利用をはじめ、全国から訪れる一般客まで幅広く受け入れてきました。創業150年を超え、このエリアで最も歴史ある老舗旅館として、現在も島を訪れる人々を温かく迎えています。

▲旅館らしい畳のお部屋。カーテンを開けると、その先は湘南海岸が広がっています
岩本楼は、28部屋からなる和風旅館です。畳のお部屋はすべて西向き。窓の先には、相模湾の眺望が広がります。空気が澄んだ日には、富士山が見えるお部屋も。チェックインを済ませたら、海辺のお部屋で寛ぐ時間を楽しみましょう。
定員は2名~で、全室にお風呂とトイレがあります。備え付けの冷蔵庫にはビールやソフトドリンクが用意されており、利用した分をチェックアウト時に精算する昔ながらのスタイルが、今となっては新鮮に感じられます。なお島内には、コンビニエンスストアはありません。

▲歌舞伎の演目にも登場する弁天小僧が、お仕置きのために度々閉じ込められた洞窟であるという謂れも・・・
この洞窟風呂は、かつての弁天堂の遺構をそのままお風呂に改装したものです。奥行き20mの神秘的な空間の奥には、今も八臂(はっぴ)弁財天さまがお祀りされており、心身ともに清められる「ありがたいお湯」として岩本楼の名物風呂となっています。

▲2001年に国登録有形文化財に登録された「岩本楼ローマ風呂」。客船のようなつくりの脱衣所も素敵です
洞窟風呂とは、打って変わって明るく華やいだ意匠のローマ風呂も格別です。ドーム状の天井をはじめ、浴室への入口のドア、また古代ローマの馬蹄型を模した浴槽上部にもステンドグラスが設えてあります。美しい色合いのステンドグラスを鑑賞しながら、湯船に浸る至福の時間を楽しみましょう。洞窟風呂とローマ風呂、時間帯で入れ替え制となっています。チェックアウトまで、どちらのお風呂も「体験する」ことをお薦めします。

▲旅館と言えば、お部屋での食事が楽しみの一つです(夕食の一例。一部のお部屋は、レストランまたは会食場での食事となります)
寛ぎながら楽しむ食事も、旅館の楽しみの一つです。相模湾の海の幸も存分に楽しむことができる夕飯は、梅・鶴・亀の3つの会席料理から選ぶことができます。窓越しに相模湾を感じながら、ゆっくりといただくお料理は、一層美味しく感じることでしょう。
朝食は、鯵の干物やしらすでいただく和食となっています。観光客の少ない早朝の江の島散策を楽しんでから、ゆっくり朝食をいただくのもいいですね。

▲夏季にオープンするプールは、宿泊客さまのみ利用することできます。このプールとお風呂を目当てに毎夏リピートされるお客さまも

▲見応えのある資料が展示される「資料館」
岩本楼の歴史は江の島の歴史、と言っても過言ではないほど、鎌倉時代から江の島に関わってきた岩本楼(岩本家)。1階奥にある資料館では、鎌倉時代から昭和までの岩本楼の歩みを知り、学ぶことができる貴重な資料が多数展示されています。館内には、他にも卓球台やマッサージチェアなど旅館らしい設備も整っています。

▲西浦、富士見浜と呼ばれる入り江に建つ岩本楼。客室からは遮るものなく、相模湾を望むことができます
実は江の島、22時~朝の5時まで車両の出入りが出来ません。静まり返る江の島の夜は、鎌倉時代から変わらない静謐な時間が流れているのかもしれません。
遡れば、鎌倉時代から江の島の神仏とともに、武将や大名から庶民までも受け入れ、休憩や宿泊の場を提供してきた岩本楼。宿坊以前からの歴史を、現在も館内の数か所に、弁財天さまが祀られていることからも感じることができます。
流行りの昭和レトロではありません。「鎌倉レトロ」とでも呼ぶべき、鎌倉時代からの歴史と神仏の息吹が宿る岩本楼で、ゆったりと流れる江の島時間を堪能する旅に、出かけてみてはいかがでしょうか。
取材 ALOHAS
※掲載情報は2026年2月取材時点のものです。