#ていねいな暮らしをはぐくむヒント ①

鎌倉の自然に触れ、自分らしい生き方を見つける「いけばな」の世界へ

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慌ただしく過ぎる毎日に生活の乱れを感じつつも、それを変えられずにいる。そんな満たされない日を少しでも変えるべく、奥八幡エリアに暮らす人たちから体験を学ぶ。

【Tumbler&FLOWERS】鎌倉の自然に触れて自分らしい生き方を見つける

鎌倉を象徴する小町通りや、鶴岡八幡宮を越えた先にある “奥八幡” 。山が近くて静かな住宅街が広がるこの地を歩けば、ゆったりとした時間が流れていることがわかる。

ここ奥八幡でめざすのは、東京・表参道から移ってきた【Tumbler&FLOWERS(タンブラー アンド フラワーズ)】という いけばな教室。向かう途中、入り組んだ道で迷子になっていると、「こっちこっち〜」と、小さなお子さんたちと一緒に手招きしてくれたのが、主宰者の渡来徹さん。編集者・ライターとしての経歴を持ち、今は花道家として活動されている。敷居の高いイメージのいけばなに緊張したけど、渡来さんのなにごとも受け入れてくれそうな雰囲気にほっとした。

「思いのままに花を挿して」と主宰者の渡来さん。体験を通じて、いけばなの敷居の高いイメージを覆していく。

草木のありのままの姿を知る自然観察会から

早速、レッスンの始まり!と思いきや、 「せっかく自然豊かな場所にいるので、まずは “土地の記憶” に触れに行きましょう」 と、教室近くにあるハイキングコースへ。北鎌倉の建長寺まで続くこちらでは、藪椿や山桜、シダ類などが力強く自生し、都会では見られない景色が広がっていた。

太陽を求めて懸命に生きる草花の姿を発見。植物にも命があるという、当たり前のことを忘れかけていたかも。

「潮風の影響か木の朽ち方もユニークです。またこの辺りは粘土質の土壌に腐葉土が堆積した土地のためか、断崖では粘土質にへばり付くような根の張り方も観察できます。自然の中で草木をよく観察してみると、枝の張り方や葉っぱを駆使して光の陣取り合戦をしている様子が見て取れます。また、大樹によらず、木漏れ日に咲く花のたくましさにも触れられるなど、普段の生活の中では気付けないことにも目がいく。そういった新しい発見が、いけばなをするときの想像力につながると思うんです」 。そう奥八幡の自然に目をやる渡来さんの言葉が、心を突いてはっとした。

「もっと自由でいい」背中を押された気がした

“自然観察会” を終え、いけばなのレッスンがいよいよスタート。このレッスンでまず行うのは、自分で花を選ぶことから。優柔不断な私は、迷いに迷って用意されていた季節の草花の中から、不思議な魅力を放っていた “きぶし” と、フリフリと咲く “ラナンキュラス” をチョイス。

「大人っぽい妖艶な作品にする!」と意気込むが、花選びから悩みまくり。

そして器のセレクトへ。並んでいたのは、色や形もさまざまな花瓶やボウルたち。

いけばな=剣山というイメージを持つ私は、どうしても剣山に花を刺してみたくて、難易度の高そうな背の低いボウル型の器を手に。

バランスを取るのが難しそうな器を選ぶという、自分でも予想外のセレクト。せっかくならチャレンジ!

バランスを取るのが難しいかも…と焦っていると、 「さっき自然のありようを自分に中に落とし込んだから、大丈夫!」 と渡来さん。

そんなゆるやかな雰囲気の中、ハサミで枝を切ったり、余分な葉を落としたりとレッスンは進む。初めての体験で戸惑う私に渡来さんは、「自然の中で見た枝葉はどのように生きていたか、また花の表情や色味をどうとらえると自分の生活空間になじむか、なんてことを意識してください」 とさりげなくアドバイスしてくれた。

どこの枝葉を落とすべきか...を迷うこと20分。いいものを作りたいという雑念と野心が邪魔をする...

いけばなの肝となりそうだけど、花の茎の長さも自由にカット。どんな仕上がりになるかワクワクしている。

なんとしてでもやってみたかった、剣山に花を挿すところ。サクッとした感触が気持ちよくてハマってしまいそう。

そうして、きぶしの枝のゆるやかなカーブ、ポンポンとしてかわいらしいラナンキュラスの花びらが活きるよう意識した、いけばながようやく完成した。

ほかの誰かからしたら不格好かもしれない…。そう心配した私に、 「いけばなには、正解も不正解もないんです。誰のために花をいけるかというと、今はたいがい自分のために、ですよね。だからみずからの感性と向き合って、自分が心地いいと思うようにいければいい。まぁ、これがなかなか難しいんですが…。ただそうした中で培われた感覚は、日々の暮らしを彩ってくれるし、その積み重ねが自分を幸せにしてくれるはずです」 と渡来さん。

そんな言葉も一緒に持ち帰った道すがら、少しだけ自由になれたような気がして、この先の日常が晴れやかに変わっていく予感がした。

今回の体験でいけた作品がこちら。花のいけ方のみならず、鎌倉の自然を教科書がわりに植物のありようも学ぶことができた。