
▲昭和11年に改築され現在の建物(洋館)となる
Enokama NEWS
2023年4月以降、建物などの修繕やバリアフリー化のためのメンテナンスを目的に【鎌倉文学館】が長期間休館します。鎌倉市によると期間は4年間程度になる予定とのこと。休館中は、常設展示の閲覧はもちろん特別展の開催もありません。館内への入館だけでなく庭園への入場もできなくなります。休館前に、ぜひ鎌倉文学館にお出かけください。(写真は春のバラ最盛期の様子)
▲昭和11年に改築され現在の建物(洋館)となる
長谷の海を見下ろす小高い丘の上に建つ鎌倉文学館。その建物と庭園は加賀藩主前田侯爵家の別邸として明治23年頃、和風の邸が建てられました。その後、類焼や関東大震災による倒壊により2度の建て直しを経て、昭和11年に改築され現在の館となります。戦後はデンマーク公使や故佐藤栄作元首相らが借り受け、要人の別荘として長く使われていました。
鎌倉は、古くは万葉集にも地名が登場する土地。武家社会、鎌倉時代に関連する吾妻鏡、太平記や徒然草など歴史的名著も多く、和歌を学び愛した三代将軍源実朝は「金槐和歌集」も編纂しました。
明治中期以降は鉄道の開通をきっかけに多くの作家や文士らが鎌倉を訪れ、滞在し暮らすようになります。文明開化をきっかけに鎌倉に文学が根付いていき、沢山の作品が生まれました。
鎌倉市民による鎌倉の文学を研究する活動を発端に、鎌倉文学館を開設する機運が高まっていたところ、昭和58年に前田家より鎌倉市へ寄贈されたことで、この洋館を文学館として使用することに。そして昭和60年に鎌倉文学館が開館します。以来、鎌倉の地と関わりがある作家や文士の貴重な原稿などの資料などを保管、また展示し、広く美しい庭園も公開しています。
※平成12年に登録有形文化財となりました。
休館前に予定されている企画展やイベントを紹介します。館内展示をはじめ庭園でのひと時をお楽しみください。
(特別展)澁澤龍彦 高丘親王航海記(2022/10/2-12/23)
「西洋の芸術文化や歴史への深い造詣から、独創的なエッセイや小説を書いた澁澤龍彦。彼の没後35年を記念し、唯一の長編小説で遺作となった「高丘親王航海記」に焦点を当てます。平安時代に生きた高丘親王の天竺への幻想的な旅を書いた作品と澁澤龍彦の魅力について、草稿や創作メモなどの資料と、漫画家の近藤ようこさんがコミカライズし高く評価された「高丘親王航海記」の漫画原稿をとおし紹介します。」(鎌倉文学館HPより)
10月2日(日)~12月23日(金)まで開催。開館時間は9時~16時30分(入館は16時まで)。
入館料 一般500円、小中学生200円(鎌倉市民は入館無料。住所がわかる身分証明書をご持参ください。)
※休館日:10月3日(月)、11月14日(月)、21日(月)、28日(月)、12月5日(月)、12日(月)、19日(月)
詳細は鎌倉文学館ホームページにてご確認ください。
▲約200種、250株の薔薇が咲く秋の庭園でゆっくりとお楽しみください (春バラの様子 写真提供:鎌倉文学館)
◎鎌倉文学館フェスティバル2022
10月15日(土)~11月13日(日)まで開催。開館時間は9時~16時30分(入館は16時まで)。
入館料 一般500円、小中学生200円(鎌倉市民は入館無料。住所がわかる身分証明書をご持参ください。)
「言葉と音楽のコンサート」
10月16日(日)13時30分~
出演:ライトハウスアンサンブル、朗読 中 寛三(劇団俳優座)
雨天時は室内開催、先着順
「ヴァイオリンのコンサート」
10月23日(日)13時30分~
出演:能澤摩耶(ヴァイオリン)、辻英恵(ピアノ)
雨天時は室内開催、先着順
「バラ解説」
会期中の毎週水曜日 10時30分~
解説:バラ園管理人
「庭園の特設カフェ」
庭園でオリジナルブレンドのコーヒーを販売します。緑の木々と海、そしてバラを眺めながらゆったりとした時間をお過ごしください。
10月2日(日)~11月27日(日)土日祝日 11時~16時(雨天中止)
※10月9日(日)、30日(日)、11月5日(土)、13日(日)を除く
各イベント詳細は鎌倉文学館ホームページにてご確認ください。
(収蔵展)鎌倉文学年表 古典編(2023/1/4-3/26)
鎌倉ゆかりの文学を年表形式で、鎌倉市中央図書館仙覚文庫の資料もあわせ、万葉集や吾妻鏡などの古典文学を中心に紹介する展示です。休館前最後の展示となります。
鎌倉文学館のもう一つの楽しみ方は、建物へのアプローチ、館内談話室や美しい庭園での静かなひと時です。
▲三島由紀夫も作品「春の雪」で描写した石造りの門。このトンネルを抜けると洋館が姿を現します(写真提供:鎌倉文学館)
▲青い瓦屋根が映える昭和初期改築の洋館の前に広がる庭園。洋館前にたたずむ銅像も長谷の海岸へ視線を向けています
庭園の南側は200種、250株のバラ園となっており秋も沢山の花が楽しめます。バラ園の前には松の木が、さらに庭園を囲むようにオオムラサキツツジや大きなシュロ、そしてクリスマスローズなどの多様の草木、植生を楽しむことができます。庭園も建物同様に純洋式ではなく何処となく日本を感じることができ落ち着く空間が広がっています。
▲複数個所に設置されているステンドグラスの窓。洋風な意匠のライトなど館内の設えも鑑賞の対象として楽しむことができます
▲洋館として改築された際に内装も洋風に。部分的に残る日本式の建築とアールデコ様式の装飾バランスが時代を感じさせます。常設展示品と合わせてお楽しみください
▲鎌倉文学館内の隠れた人気スポット、談話室とテラス席。読書に没頭したり、思索に耽る方も多いとか
2階の最奥にあるのは、もともとは第四寝室として使われていた洋室です。現在は談話室として使われており、ドアを抜けると庭園が見渡せるテラス席もあります。鑑賞の間の休憩に限らず、ゆっくりと静かな空間を楽しまれる方も多いそうです。
▲入口すぐのミュージアムショップ
▲過去の特別展などの図録やオリジナルの文具などが購入できます。気になるものは休館前のお求めが確実です
休館期間中は、ミュージアムショップでのオリジナルグッズ類の販売も休止となる可能性があるそうです。過去の特別展で制作された各図録やオリジナルデザインのしおり、一筆箋など文具好きにはたまらないアイテムもいろいろ。入口すぐにあるミュージアムショップもぜひご利用ください。
長期休館まで半年となる鎌倉文学館。涼しくなるこれからの季節、文学に触れるもよし、昭和初期の洋館の建築を愛でるもよし、もちろん広い庭園で寛ぐもよし。楽しみ方は人それぞれ。ご自身の楽しみ方を見つけに、ぜひ鎌倉文学館へお出かけください。
取材・構成 ALOHAS
協力 鎌倉文学館